セリアック病の発症に腸内細菌の違いによるグルテン代謝の違いが関与?

(2016年8月) "Gastroenterology" 誌に掲載されたマックマスター大学(カナダ)の研究によると、セリアック病の発症に腸内細菌が関与している可能性があります。 遺伝子的にセリアック病になりやすい人が全人口の40%を占める(*)のに、実際にセリアック病を発症する人は1%でしかありませんが、その理由が腸内細菌にあるのではないかと言うのです。
(*) おそらく北米の場合の数字。 日本はもっと低いと思います。
研究の方法
マウスの腸内に次の2種類の腸内細菌のいずれかを移植するという実験を行いました:
  • 乳酸菌の一種であるラクトバチルス菌
  • セリアック病の患者から採取した緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)と呼ばれる日和見菌(健康な人には害を及ぼさない細菌)
結果

緑膿菌を移植されたマウスは、グルテンの代謝のされ方がラクトバチルス菌を移植されたマウスと異なりました。 腸の酵素はグルテンをあまり消化できないため、グルテンの消化には腸内細菌による代謝が関与しているのだと考えられます。

さらに、グルテンの代謝において、ラクトバチルス菌がグルテンの毒性を無害化したのに対して、緑膿菌が作り出したグルテン配列は炎症を促進しました。

関連研究

"Canadian Journal of Microbiology"(2015年) に掲載された研究では、セリアック病を患っていてグルテン・フリーの食事をしている子供は健常な子供に比べて、腸内から検出されるラクトバチルス菌の数が少ないことが示されています。

また、"Clinical Microbiology Reviews"(2014年)に掲載されたレビュー(過去の文献の調査)によると、これまでに次のような研究が発表されています:
  • セリアック病の子供では腸内に住むラクトバチルス菌やビフィズス菌の数が少ないことを示した研究
  • ラクトバチルス菌・ビフィズス菌にグルテンの消化を助けたりグルテンの毒性を和らげる効果があることを示した研究
  • ラクトバチルス菌・ビフィズス菌が腸の上皮細胞をグリアジン(グルテンの成分の1つ)の害から保護してくれることを示した研究
解説
研究者は次のように述べています:

「腸内に存在する細菌の種類によってグルテンの消化のされ方が異なり、セリアック病になる条件を遺伝子的に満たしている人においては、グルテンの消化のされ方によってセリアック病の発症リスクが上がったり下がったりしているのでしょう」

「つまり、セリアック病発症を決定付ける最後の一藁が腸内細菌となっているケースが存在するのではないかということです」
セリアック病の患者数は過去10年間のうちに着実に増え続けており、その理由としては環境的な要因を疑われています。
腸内細菌に影響する環境の変化というと、環境が過度に清潔なったとか、食生活が変化したなどが考えられます。 抗菌剤などの化学物質の影響もあるかもしれません。