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禁煙補助薬のバレニクリンで自殺リスクは増加しない

(2013年9月) "Annals of Internal Medicine" に掲載された米国の研究(ファイザー社の研究者が大半)によると、バレニクリンにより欝や自殺願望のリスクが増加することはありません。

米国食品医薬局(FDA)が 2007年に、禁煙補助薬のバレニクリン(商品名は「チャンピックス」や「チャンティックス」)が一部の人において自殺願望や問題行動などの副作用の原因となることを指摘していました。
この研究は、バレニクリンの発売元であるファイザー社の資金提供により行われました。
研究の方法
18~79才の喫煙者525人(2/3が女性)にバレニクリンまたはプラシーボを服用してもらいました。 喫煙者は全員が鬱病の患者または鬱病の病歴のある人でしたが、治療により症状は安定していました。 また、心血管に問題のある人はいませんでした。
研究グループによると、禁煙しようとする人の約半数が現在または過去に鬱症状などを抱えている/いた人であるにも関わらず、これまでの禁煙補助薬の試験では抗鬱剤や抗精神病薬を服用している人が研究対象から除外されていました。

525人のうち約3/4ほどが抗鬱剤や抗不安薬を日常的に使用していましたが、バレニクリン以外の禁煙補助薬や、タバコ以外のニコチン製品(ニコチンパッチなどでしょう)、マリファナを使用していた人は研究の対象外としました。

グループ分け

525人を2つのグループに分けて、一方のグループにはバレニクリン(1mg×2回/日)を、そしてもう一方にはプラシーボを3ヶ月間にわたって服用してもらいました。 そして、服用を停止した後も40週間にわたって両グループを追跡調査しました。

過去に自殺願望があったり自殺を試みたことがあったのは、バレニクリンのグループでは88人、プラシーボのグループでは89人でした。 また、研究開始の時点で自殺願望があったのは、バレニクリンのグループで6人、プラシーボのグループで1人でした。

結果

バレニクリンを服用したグループでは、吐き気・頭痛・異常な夢などの副作用が見られたほか、プラシーボのグループと比べて不眠症の率が2倍になっていました。 しかし、気分・不安感・鬱症状の悪化に関しては両グループで差はありませんでした。

バレニクリンまたはプラシーボの服用を開始してから2ヶ月が経ち最後の3ヶ月目に入った時点で自殺願望があったのは、バレニクリンのグループで15人、プラシーボのグループで19人でした。 また、プラシーボのグループで自殺しようとした人が一人いました。
2007年にFDAから警告が出たときに、ファイザー社はバレニクリンではなくニコチン禁断症状が自殺願望の原因だと主張していました。 服用開始から2ヵ月後の時点で自殺願望の人が増加しているのは、ニコチン禁断症状によるものでしょうか。
服用期間終了後40週間における死者

両グループは3ヶ月の服用期間が終わった後も40週間にわたって追跡調査されました。 この40週のうちに二名が死亡しましたが、一人は転倒が原因で、もう一人(バレニクリンを服用していたグループ)はモルヒネおよび(バレニクリンではない)処方薬の過剰投与が原因でした。 後者については自殺である可能性もありますが、バレニクリンの服用期間が終わってから10週目のことだったのでバレニクリンは関係が無いと考えられています。

禁煙にも効果

3ヶ月間の服用期間の最後の1ヶ月間における禁煙補助薬の効果を調べた(呼気に含まれる一酸化炭素の量を検査した)ところ、バレニクリンを服用していたグループでは35%がタバコを吸っていなかったのに対し、プラシーボのグループで吸っていなかったのは15%でした。

解説

今回の被験者たちのように鬱病の治療をきちんと受けている人と鬱病を放置している人とでは、バレニクリンによる禁煙の影響が異なる可能性があります。 したがって、鬱病の治療を受けていない人がバレニクリンを使用して禁煙すると、バレニクリンによるものかニコチン禁断症状によるものかは不明だけれども、今回の研究で示された以上に自殺願望などのリスクがあるかもしれません。

研究者によると、鬱の病歴がある人はニコチン禁断症状が重症になりがちであるため、精神疾患のある(あった)人にバレニクリンを処方する際には綿密なモニタリングが必要です。