化学療法だけでなく腫瘍の存在それ自体もケモ・ブレインの一因

(2017年11月) "Neuroscience" 誌に掲載されたトロント大学などの研究によると、ガンの化学療法だけでなく腫瘍の存在それ自体もケモ・ブレインの一因かもしれません。 マウス実験において、乳ガンになったのち抗がん剤を投与していない時点でも認知機能の低下が見られたのです。

ケモ・ブレインとは

ケモ・ブレインとはガンの化学療法(ケモ・セラピー)の副作用として生じる認知機能(記憶力・思考力・集中力)の低下のことです。 ケモ・ブレインは、頭の中に霧がかかったような「もやっ」とする感じがすることから「ケモ・フォグ(化学療法の霧)」とも呼ばれます。

乳ガンでは65%ほどの患者がケモ・ブレインを経験しますが、乳ガン以外のガン患者にも同様の症状が生じます。

研究の方法

乳ガンを発症している雌マウスのグループと乳ガンではない雌マウスのグループを用いた実験を行いました。

実験では、両グループの認知機能を調べたのち、両グループをさらに2つのグループに分けて抗がん剤(メトトレキサートと5-フルオロウラシル)または食塩水(プラシーボとして)を投与して、各グループの認知機能を調べたり脳や血液などを検査したりしました。

結果

抗がん剤を投与する前の時点で、ガンを発症しているグループは発症していないグループよりも認知機能が低下していました。

そして、ガンを発症しているグループでも発症していないグループでも、抗がん剤の投与により認知機能が低下しました。 ガンを発症していて抗がん剤を投与されたグループは、ガンにより低下していた認知機能が抗がん剤によりさらに低下したということになります。

脳や血液の検査では以下が明らかになりました:
  1. 腫瘍が生じると免疫系がそれを阻害しようとしてサイトカインを放出するが、それによって脳の神経系に生じる炎症が脳機能に悪影響を及ぼす。
  2. 化学療法のために海馬(記憶や学習に深く関与する脳領域)において新しく作られる神経細胞の量が減り、そのために記憶力が低下する。
  3. 腫瘍の成長と化学療法の両方により、海馬と前頭葉のサイズが小さくなっていた。前頭葉は注意力・感情の制御・複雑な学習などに関与している。

関連研究

2015年に発表されたロチェスター大学の研究では、化学療法を受けるときに並行して運動を行うとケモ・ブレインが生じにくいという結果になっています。