乳ガンの抗ガン剤を投与する時間帯によって、生じる炎症の量が異なる

(2017年1月) "Scientific Reports" に掲載されたオハイオ州立大学の研究によると、乳ガンの抗ガン剤を投与する時間帯を工夫することによって抗がん剤の神経学的な副作用を減らせる可能性があります。

マウス実験で、抗ガン剤を投与する時間帯の違いによって抗ガン剤により発生する炎症(*)の量に差が出たのです。
(*) 特に脳における炎症は、化学療法の副作用である抑鬱・不安感・短期的な記憶喪失に関与していると考えられています。
研究の方法

乳ガンの治療に一般的に用いられるシクロホスファミドとドキソルビシンという2種類の抗ガン剤をマウス(腫瘍は発生していない)に投与するという実験を行いました。

実験では、消灯から2時間後(マウスの活動が活発になる時間帯)または点灯から2時間後(マウスが眠る時間帯)に抗ガン剤を注射し、注射をしてから1・3・9・24時間後に脾臓(*)および脳(視床下部と海馬)の組織を採取して炎症の発生状況を調べました。
(*) 免疫機能に深く関与する臓器。
結果
脾臓

明るい(マウスの活動が低下している)時間帯に抗ガン剤を投与したときには、脾臓の炎症を促進する遺伝子の発現量が増加しました。

また、抗ガン剤が体内で代謝されて生じる有害な代謝物の量が増加していました(*)。 こうした代謝物は炎症に関与していますし、そうした代謝物の1つであるドキソルビシノールは一部の患者において心臓にダメージを引き起こします。
(*) おそらく「暗い時間帯に抗ガン剤を投与したときよりも、有害な代謝物の量が多かった」という意味。

暗い時間帯に抗ガン剤を投与したときには、明るい時間帯に投与した時よりも脾臓の炎症が随分と軽度でした。

脳に関しては脾臓の場合と逆に、暗い時間帯に抗ガン剤を投与すると炎症促進性の遺伝子の発現量が増加し、明るい時間外に抗ガン剤を投与すると炎症の発生量が少なくて済むようでした。

解説
現時点では実用的でない

今回の研究だけでは、抗ガン剤を投与するのに最適な時間帯は明らかではありません。 マウス実験であるうえに、2つの時間帯でしか投与のタイミングと炎症の量の関係を調べていないためです。

もっと色々な時間帯で投与のタイミングを探れば、抗ガン剤の副作用を最低限に抑制できる投与タイミングが見つかるかもしれません。

脳と脾臓で時間帯が異なる理由
脳と他の臓器とでは時計遺伝子のリズムが異なることが知られていますが、投与された抗ガン剤の代謝に時計遺伝子が影響している可能性が考えられます。