慢性炎症でガンのリスクが増加する理由

(2015年1月) "PLoS Genetics" に掲載されたマサチューセッツ工科大学の研究で、大腸炎・膵炎・肝炎などに見られる慢性炎症とガンの関係の解明が進んでいます。

研究者は次のように述べています:
「慢性炎症は、膵臓・食道・肝臓・結腸などのガンを助長します。 慢性炎症を抱えている人がガンのリスクを増やさないために避けられるモノがあります。 例えば、一部の食品はDNA損傷の原因となりますが、こういう食品は気を付けていれば避けることが出来ます」
今回検証された仮説
炎症には次の2つの性質があります:
  1. 細胞の分裂を促進する
  2. 免疫細胞が酸素と窒素を含有する高反応性分子(フリーラジカル?)を生産するためにDNAが傷つく原因となる

分裂中の細胞はDNA損傷による遺伝子変異を起こし易いため、炎症のこの2つの性質がガンを引き起こしているのではないかという仮説が立てられていました。 これまでは技術力不足のために、この仮説を検証することが出来なかったのですが、今回の研究で仮説の検証が行われたというわけです。

慢性炎症ではDNA損傷と細胞分裂のタイミングが重なってしまう

研究グループは、膵臓に特定の遺伝子変異が生じたら細胞が発光するというマウスを遺伝子改造によって作り出すことに成功していました。 今回の研究では、この遺伝子改造マウスの膵臓に炎症を発生させるという実験を行い、炎症によって遺伝子変異が生じるか否かが炎症のタイミング次第であることを明らかにしました。

すなわち、2回の炎症発作のあいだの期間が1週間以上離れている場合には炎症による遺伝子変異の増加は見られませんでしたが、その期間が数日間でしかない場合には遺伝子変異が増えていました。

マウスの膵臓を用いてさらに研究を進めたところ、炎症によるDNA損傷は大部分が直ちに起こるのに対して、炎症による細胞分裂が起こるのは炎症が始まって4~6(several)日程度が経過してからでした。

DNA損傷は通常、ガンの原因となる遺伝子変異を引き起こすことなく速やかに修復されるのですが、前回の炎症発作に誘発された細胞分裂が起こる頃(つまり前回の炎症発作から4~6日目)に次の炎症発作が生じると、(この新しい炎症発作によるDNA損傷と前回の炎症発作による細胞分裂の時期が重なってしまうために)多数の遺伝子変異が生じていました。

急性の(怪我や感染症に反応して生じる健全な)炎症であれば遺伝子変異の発生を防ぐための防御機構として作用するはずのDNA損傷と細胞分裂のタイミングのズレが、炎症が何度も再発したり恒常化している(不健全・不自然な)状態においては逆効果になるというわけです。

炎症によるDNAの損傷を悪化させるモノ
今回の研究では、アルキル化剤(*)がDNA損傷に与える影響についても調べました。 アルキル化剤によるDNA損傷は通常は細胞が修復できる程度のものですが、損傷の量が多過ぎる場合にはDNA塩基のアルキル化により生じる遺伝子変異のために細胞がガン化することがあります。
(*) アルキル化剤は食品、化粧品、環境汚染物質、一部の抗がん剤に含まれています。 「食品添加物の危険性.com」というサイトによると、酸化防止剤として食品に添加されるBHAやBHTなどもアルキル化剤です。

調査の結果、健康な組織に比べて炎症が生じている組織においては(おそらく、炎症に誘発される細胞分裂のために)アルキル化による遺伝子変異のペースが随分と速くなっていました。

このことから、慢性炎症疾患を抱えている人は、大気・水・食品に存在する(アルキル化剤などの)発ガン性物質による悪影響を強く受けるのだと考えられます。

胎児や幼い子供も(慢性炎症者と同じく)細胞分裂のペースが速いために、発ガン性物質による悪影響が同様に強まる恐れがあります。 化学物質に関する既存の安全基準は成人を基準にして作られているため、慢性炎症疾患の患者や幼い子供では安全基準があてになりません。