(2017年11月) 米国腎臓学会で発表予定であるサンタ・マリア病院(ポルトガル)の研究によると、慢性腎疾患(CKD)の患者はカフェインを摂取する習慣があると死亡リスクが下がるかもしれません。
研究の方法
米国に住むCKD患者2千数百人のカフェイン摂取量などを調べたのち10年間ほどにわたり生存状況を追跡調査しました。
そして、カフェイン摂取量に応じてデータを4つのグループに分けて、グループ間で死亡リスク(死因は問わない)を比較しました。 データの分析においては、死亡リスクに影響する様々な要因(腎臓などの健康状態・年齢・生活習慣など)を考慮しました。
結果
カフェイン摂取量が多いほど死亡リスクが低いという関係が見られました。 カフェイン摂取量が最低だったグループに比べて、カフェイン摂取量がそれよりも多い3つのグループでは死亡リスクが次のように下がっていました:- カフェイン摂取量が最大のグループ: -24%
- カフェイン摂取量が2番目に多いグループ: -22%
- カフェイン摂取量が3番目に多いグループ: -12%
今回の研究は観察研究でしかないので、今後のランダム化比較試験で今回の結果を確認する必要がありますが、コーヒーなどでカフェインを摂取する習慣によりCKD患者の死亡リスクが下がることが期待されます。
カフェインについて
安全なカフェイン摂取量
"Food and Chemical Toxicology" 誌に掲載されたシステマティック・レビューによると、カフェインの摂取量は健康な成人の場合には400mg/日以下(妊婦は300mg/日以下)であれば安全だと思われます。 未成年(3~19才の)に関してはデータが不十分ですが、体重1kgあたり2.5mg以下であれば安全であるようです。
カフェイン含有量
このレビューでは、各飲料240ml中にカフェインが次の量で含有されているとみなしました:- 普通のコーヒー: 95mg
- エスプレッソ: 373.6mg
- エナジー・ドリンク: 80mg
- エナジー・ショット(*): 480mg
- コーラ: 24mg
- 紅茶: 47.2mg
- 緑茶: 24.8mg
エナジードリンクは避けるべき
上記のようにエナジードリンクには多量のカフェインが含まれていますが、多くのエナジードリンクはカルニチンというアミノ酸由来の物質も成分として含んでいます。 このカルニチンから体内で腸内細菌や肝臓の酵素の作用によりTMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)と呼ばれる有害な物質が作り出されます。
TMAOは心臓病・動脈硬化・腎臓疾患のリスクを増加させる恐れがあります。 また、"Scientific Reports" 誌に先月発表された研究では、腎機能が少しでも低下している人はTMAO血中濃度が高いと死亡リスクが増加するという結果になっています。
糖類の取り過ぎも腎臓によくないので、コーラも避けたほうが良いでしょう。