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地球の気候の変化により今世紀末にかけてセレン不足が悪化する恐れ

(2017年2月) Eawag(スイス)などが行い "PNAS" 誌に掲載された研究によると、気候の変化のためにミネラルの一種であるセレン(セレニウム)が世界の多くの地域で不足する恐れがあります。出典: Selenium deficiency promoted by climate change

セレンについて

セレンは人体にとって微量が必要とされる必須元素で、抗酸化物質として有名です。 セレンは穀類などの食品に含まれていますが、そのような食品に含有されるセレンの大部分は、穀類が育つ土壌に由来します。

現在のところ世界全体で10億人ほどがセレン不足だと考えられています。 ニュージーランドなどでは土壌中に含まれているセレンの量が少ないためセレン不足が懸念されていますが、日本では普通の食生活を送っている健康な人がセレン不足になる恐れは無いとされています。

セレンは適切な摂取量の幅が狭く、適量を摂取するのが容易ではない抗酸化物質です。 セレンが欠乏(極度に不足)するとガンのリスク増加するというデータが存在する一方で、セレン摂取量が過剰であると糖尿病・前立腺ガン・早死にのリスクが増加するというデータも存在します。

世界各地のセレン濃度の変化
下の地図は、地球の気候の今後の変化が様々に予測されるなかで、気候の変化が中程度である場合に、世界各地において土壌中のセレニウム濃度が今世紀末にかけてどのように変化するかを予測したものです。
赤色が強いほど土壌中のセレンが減る量が多い。青色は増加。 真っ青の地域は10%超の増加で、真っ赤な地域は10%超の減少。

オーストラリアや中国、インド、アフリカなどの一部ではセレンの量が増えるけれども、世界全体ではセレンの量が減ると予測されています。 上記の地図を見ると日本はセレンが少し減るという感じですが、小麦などの穀物は大部分が輸入されているので、生産地のセレン濃度の変動が問題となるでしょう。 世界の耕地の66%でセレンの濃度が平均で6%低下すると予測されています。

土壌中のセレン濃度に影響する天候的要因
土壌中のセレン濃度に影響するいちばんの要因は降雨です。 降雨は土壌からセレンが流出する原因となりますが、その一方で土壌中の酸素濃度とpHを押し下げてセレン濃度を上げる作用もあります(*)
(*) セレンは次のような性質を有する土壌で濃度が低下します: 1.pHが高い、2.酸素が多い、3.粘土が少ない、4.有機炭素が少ない。

そういうわけで、セレンの濃度が増加すると予測されるのは降水量が少~中程度で土壌中に含まれる粘土が多い地域で、セレン濃度が低下すると予測されるのは乾燥していて土壌のpHが高く、さらに土壌の粘土含有量が少ない地域だそうです。

対策
肥料や家畜のエサに含まれるセレンの量を人為的に増やすという対策が考えられます。 フィンランドでは 1984年以来、セレンを添加した肥料が使われています。