激しい運動により老化抑制タンパク質「クロトー」の血中濃度が増加

(2018年8月) "Journal of Circulating Biomarkers" に掲載されたメルボルン大学などの研究で、激しい運動をした直後にはクロトーの血中濃度が増加するという結果になりました。

クロトーについて

クロトーは20年ほど前にアンチエイジング効果を有するタンパク質として特定されました。 その後の研究で、クロトーたんぱく質を作り出すクロトー遺伝子が特定され、クロトー遺伝子が活発な人は寿命が長いことも明らかになりました。 動物実験では、クロトー遺伝子を持たない実験動物が老化しやすいことも示されています。

クロトー遺伝子が作りだすタンパク質(αクロトー)は体内のさまざまな組織に存在しますが、大部分は腎臓(特に遠位曲尿細管)に存在します。 αクロトーの他に、βクロトーやγクロトーというクロトーたんぱく質のバリエーションがのちに見つかっています。
βクロトーやγクロトーにも、これらに対応する(これらを作り出す)遺伝子(βクロトー遺伝子とγクロトー遺伝子)が存在します。

αクロトーとSクロトー

α/β/γという3種類のクロトーたんぱく質のうち最初に見つかったαクロトーは、エネルギー/グルコース/ リン酸塩の代謝における様々な細胞経路に関与しています。

αクロトーには、膜結合型αクロトーと膜結合型αクロトーから生じ血流中に存在する可溶性クロトー(Sクロトー)の2種類があります。

Sクロトーはイオン・チャネルやインスリン・シグナル伝達経路に作用します。 また、Sクロトーの血中濃度が高いと死亡リスクが低いというデータがあります。

研究の方法

44~51才の健康な男女10人(男女半々)に、ウォーキング・マシンで平均12分間の激しい(心拍数が最大心拍数の90%以上となる)運動を空腹時に行ってもらいました。

Sクロトー血中濃度などの測定は、この激しい運動を行う1週間前~1週間後(*)にかけて行いました。
(*) 運動をする1週間前、運動をする直前、運動をした直後・30分後・240分後、および運動をしてから1週間後。

結果

運動直後にはSクロトー血中濃度が増加しましたが、運動終了から30分後にかけて元の水準へと戻りました:
  • 運動直前: 483pg/mL(男性423、女性669)
  • 運動直後: 602pg/mL(男性596、女性765)
  • 30分後: 497pg/mL(男性464、女性722)
  • 240分後: 485pg/mL(男性468、女性649)

今後

1回こっきりの運動ではない運動習慣(定期的な運動)がSクロトーの長期的な血中濃度ひいては健康に及ぼす影響を今後の大規模な研究で調査することが望まれます。

おまけ

"Iranian Journal of Basic Medical Sciences"(2018年1月)に発表されたレビューによると、Sクロトーにはガンを抑制する効果も期待できます。 これまでの研究で、Sクロトーがガン細胞の成長・移動・増殖を抑制したりガン細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を促進(*)したりすることが示されています。
(*) クロトーは正常な細胞のアポトーシスを抑制するが、ガン細胞のアポトーシスは促進する。