ココナッツ・オイルの健康効果の真偽

(2015年1月) ココナッツ・オイルはバター以上に飽和脂肪酸の含有量が多いため、1980年代には体に悪い(心臓病の原因になる)食用油だと言われていましたが、近年になって健康的であるとしてもてはやされるようになっています。
ココナッツ・オイルとパーム油の違い

ココナッツ・オイル(椰子の実の油)とパーム油(椰子油)は名前が似ていますが、原料となる植物からして別物です。

パーム油はアフリカ産のアブラヤシ(Elaeis guineensis など)の実を絞って取り出される油で、βカロチンを含むために赤っぽい色をしています。 これに対してココナッツ・オイルはココ椰子(Cocos nucifera)という植物の果肉から取れます。 ココナッツ・オイルもパーム油も、室温では半ば固体した状態になります。

ココナッツ・オイルの効能として近年喧伝されているのは次のようなものです:

  • ダイエットに良い
  • 心臓病・糖尿病・関節炎などの慢性病の予防に効果がある
  • 消化を助けてくれる
  • AIDSやヘルペスに効く
  • 免疫系を強化してくれる
  • 皮膚や髪に塗れば若返りの効果がある
  • 歯周病や虫歯を予防できる。

しかしカリフォルニア大学バークレー校の研究者によると、以下に述べるようにこれらの効能は眉唾物です。

心臓・血管の健康への効果

飽和脂肪はLDL(悪玉)コレステロールを増加させる傾向にありますが、飽和脂肪にも様々な種類があり、種類よって化学的な構造が異なるので心臓や血管への影響も異なります。

ココナッツ・オイルに含まれる飽和脂肪の効果をヒトを対象として調べた研究は非常に少ないのですが、ココナッツ・オイルの飽和脂肪は、肉に含まれる飽和脂肪に比べてコレステロールに与える影響が中立的であると思われます。

ココナッツ・オイルに含まれる飽和脂肪はラウリン酸と呼ばれるもので、ラウリン酸を含む食品はココナッツ・オイル以外にはほとんど見当たりません。 過去の研究によると、ラウリン酸はHDL善玉コレステロールを増やしますが、LDLも同様に増やすと思われます。

例えば 2009年に "Lipids" 誌に掲載されたブラジルの研究でも、若い肥満女性たちにココナッツ・オイルを12週間にわたって毎日30g足らず摂取してもらったところ、HDLとLDLの両方が増加していました。 ただし、LDLに比べてHDLの方がココナッツ・オイルによる増加率が高かったため、HDL:LDLの比率は改善しました。

しかしながら、このブラジルの研究では、どういう食用油(ラードなのか植物油なのかなど)の代わりにココナッツ・オイルを用いたのが不明なので、ココナッツ・オイルの明確な影響は不明です。 また近年では、そもそも「HDLコレステロールの量を増やすのが心臓や血管の健康に良い」という考えが正しいのかどうか疑問視されつつあります。

ココナッツ・オイルの信奉者は、「ココナッツ・オイルの消費量が多いスリランカやポリネシアの住民にはコレステロール値が健康的な人が多く、心血管疾患(心臓発作や脳卒中など)の発生率も比較的低い」と主張しますが、それが一概にココナッツ・オイルのお陰だとは言い切れません。 コレステロール値や心血管疾患の発生には、遺伝子的な要因のほか、運動量やココナッツ・オイル以外の食事内容などの生活習慣的な要因も関わってくるからです。

結論としては、ココナッツ・オイルの心血管疾患リスクへの影響は現時点では不明だと言わざるを得ません。

アルツハイマー病への効果

ココナッツ・オイルを非常に大量に摂取するのがアルツハイマー病の治療に有効であるという主張が 2012年になされました。

この主張は、理論的研究・予備的な動物実験・事例的な(個々人の体験に基づく)エビデンスに基づきなされたもので、その理屈は、ココナッツ・オイルに含まれる中鎖トリグリセライドによって肝臓によるケトン(脂肪が分解されて生じる物質)の生産が促進され、そのケトンがアルツハイマー病のためにブドウ糖を利用する能力を失った脳細胞の代替的な栄養源になるというものでした。

しかしながら、この主張がなされて以来、この主張を裏付けるような研究は(少なくともヒトを対象に行われたものは)発表されていません。

したがって、中鎖トリグリセライドがアルツハイマー病に対して有効かどうかは不明です。 仮に何某かの効果があるにしても、中鎖トリグリセライドから十分な量のケトンが生産される可能性は低いでしょう。

また、中鎖トリグリセライドの効果云々というのは既にアルツハイマー病になっている人に関しての話なので、ココナッツ・オイルにしても中鎖トリグリセライドにしてもアルツハイマー病の予防に効果があると考えられる理由は存在しません。

ダイエットへの効果

ココナッツ・オイルがダイエットに効果的であるというエビデンス(科学的な証拠)は存在しません。

ココナッツ・オイルがダイエットに効果的であるという考えは、ココナッツ・オイルの成分が中鎖トリグリセライドであるという事実を根拠としています。 トリグリセライドは食用脂肪の主要成分で、長鎖であるのが普通です。

実験環境下での研究では、中鎖トリグリセライドは他のトリグリセライドと代謝のされ方が異なり、代謝プロセスにおけるカロリー消費量が僅かに増えることが示されていますが、ヒトを対象にココナッツ・オイルのダイエット効果を調べたいくつかの研究の結果はマチマチです。

他の食用油と同じくココナッツ・オイルも高カロリー(小さじ一杯で120kcal程度)なので、ダイエットのためにココナッツ・オイルを大量に摂取するというのは非合理的です。

その他の効果

いくつかの研究において、ココナッツ・オイルで血糖値が少し下がる可能性が示されていますが、糖尿病の治療や予防に効果があると言えるほどではありません。 ココナッツ・オイルにあるとされる他の様々な効能にしても、エビデンスが十分でないか、説得力に欠けています。

まとめ
ココナッツ・オイルは、1980年代に言われていたように不健康な食品ではありませんが、近頃喧伝されているような健康効果は期待できないと考えられます。 バターやラードの代わりとして調理に用いるのは問題ありませんが、使い過ぎないように注意しましょう。