閲覧以外で当サイトのコンテンツを利用する場合には必ず引用・転載・ネタ探しをするときのルールに目を通してください。

コーヒーに肝臓ガンを予防する効果?

(2017年5月) サザンプトン大学などの研究チームが行い "*The BMJ*" に掲載されたメタ分析によると、コーヒーに肝臓ガンを予防する効果が期待できます。

メタ分析の方法

コーヒー飲用量と肝細胞ガン(HCC)(*)のリスクとの関係について調べ 2015年9月までに発表された16の研究のデータを分析しました。 16の研究のうち9ちがコホート研究(†)で7つがケース・コントロール研究(‡)でした。

(*) 肝臓ガンの中で最も一般的で、肝臓ガン全体の85~90%を占める。

(†) データに含まれる人数は227万人超で、症例数は3千件弱。

(‡) データに含まれる症例数は 1,825件でコントロールの人数は 4,652人。

結果

コーヒーを毎日2杯飲むとHCCのリスクが35%下がるという計算になりました。 この数字は、コホート研究に限ると29%、ケース・コントロール研究(*)に限ると47%でした。 
(*) コホート研究より信頼性が低いとされる。

肝臓病/2型糖尿病/B型肝炎ウイルス/C型肝炎ウイルスの有無・飲酒量・BMI・喫煙習慣にかかわらず、コーヒーを飲む習慣があるとHCCのリスクが低下するように見受けられました。

カフェインの有無

カフェインを含有している普通のコーヒーとカフェインが除去されているデカフ・コーヒーとでデータを区別して分析したところ、次の結果となりました:
  • 普通のコーヒー: 毎日2杯飲むことでHCCのリスクが27%低下する。
  • デカフ・コーヒー: 毎日3杯飲むことでHCCのリスクが14%低下する。
この結果から、コーヒーに肝臓ガンを予防する効果があるとすれば、その効果にはカフェインも関わっていると考えられます。 Caffeine reduces HCC cell proliferation. 2008年に発表された鳥取大学の研究では、カフェインに肝細胞ガンの細胞増殖を抑制する効果のあることが示されています。

カフェインを含有するコーヒーに限ったデータを備える研究は2つ(85万人)、デカフコーヒーに限ったデータを備える研究は4つでした。

また、デカフコーヒーに限ったデータを備える4つの研究は、個別的には統計学的に有意にHCCリスクが下がっていたものは1つもなく、統計学的な有意性には欠けるものの一応リスクが下がっていた3つの研究のデータ(75万人)を合わせてようやく統計学的にギリギリ有意な結果(95%CI: 0.74, 1.00)となっています。

メタ分析の信頼度

今回のメタ分析の信頼度は最低ランクの「とても低い」となります。 したがって、コーヒーにHCCを予防する効果があるにしても、その効果が今回のメタ分析の結果からかけ離れている可能性があります。

信頼度が「とても低い」と評価される理由は次のようなものです:
  • メタ分析にランダム化比較試験が含まれていない(コホート研究やケース・コントロール研究ばかりである)。
  • 出版バイアスの恐れがある。
  • コーヒーの定義(*)が明確でない。
(*) コーヒーの飲用量を調べるアンケートで、コーヒー豆の種類・焙煎度合い・抽出方式の違いにまで踏み込んで調査していないということでしょう。 コーヒー豆の種類・焙煎度合い・抽出方式によりコーヒーの成分が異なります。

類似研究

"OncoTargets and Therapy" 誌に掲載されたメタ分析

"OncoTargets and Therapy" 誌(2016年)に掲載されたメタ分析では、今回のメタ分析と同様にコーヒー飲用量とHCCになるリスクとの関係を調べて、次のような結果となっています:
  • コーヒーの飲用習慣がある場合には、飲用習慣が無い場合に比べて肝臓ガンになるリスクが50%低い。
  • 飲用量が多い(*)場合には、飲用習慣が無い場合に比べて肝臓ガンになるリスクが80%近く低い。
(*) 1日あたり1杯~3杯。 研究により異なる。

"Scientific Reports" に掲載されたメタ分析

"Scientific Reports"(2016年)に掲載されたメタ分析では、HCCに限らない肝臓ガン全体(原発性のものに限る)になるリスクとコーヒー飲用量との関係について調べて次のような結果となっています:

  • コーヒー飲用量が最も多い(*)グループは飲用量が最も少ない(†)グループに比べて、肝臓ガンになるリスクが45%低い。

(*) 研究により異なるが、1杯/日以上~8杯/日といったところ。

(†) コーヒーを滅多に、あるいは全く飲まない。

メタ分析における研究の重複

"OncoTargets and Therapy" 誌のメタ分析に用いられた研究は、"*The BMJ*" に掲載された今回のメタ分析に用いられた研究と相当に重複しています。 ケース・コントロール研究は7つのうちの6つが同じ研究です、コホート研究は "OncoTargets and Therapy" 誌のメタ分析に用いられた4つの研究に加えて今回のメタ分析で5つの研究が追加された格好です。
"OncoTargets and Therapy" 誌のメタ分析に用いられたコホート研究はすべて今回のメタ分析にも用いられています。

"Scientific Reports" のメタ分析では10の前向きコホート研究のデータを分析しましたが、そのうちの9つが "*The BMJ*" に掲載された今回のメタ分析に使われたコホート研究と重複しています。

解説

因果関係は不明

コーヒーの肝臓ガン予防の効果に関してこれまでに行われた研究は、コーヒーの飲用と肝臓ガンのリスクとの因果関係を示すものではありません。 したがって、コーヒーを常飲する人に共通するコーヒー以外のなんらかの要因のために、コーヒー愛飲者で肝臓ガンのリスクが減るように見えているだけである可能性もあります。

コーヒーの飲用によって肝臓ガンのリスクが減るのではなく、肝臓ガンの人がコーヒーを飲まないという可能性もあります。 事実、肝臓や消化器系の病気になった人は、コーヒーを飲む量を減らします。

コーヒーにより肝臓ガンのリスクが低下する理由

コーヒーに肝臓ガンを予防する効果があるとすれば、その理由は次のようなものだと思われます:
  1. カフェインの抗酸化作用によって肝臓ガン細胞の増殖が阻害される。
  2. カフェイン以外のコーヒーの成分により発ガン性物質が遺伝子に引き起こすダメージが軽減される。
  3. コーヒーに含まれるポリフェノール類が、酸化ストレスが遺伝子に及ぼすダメージを軽減する。
  4. カフェストールやカーウェオールといったコーヒーの成分に、発ガン性物質の体外への排出を促す作用がある。(*)
  5. コーヒーにより肝硬変になりにくくなる。(肝硬変は肝臓ガンの主要なリスク要因)
  6. カフェインが肝炎ウイルスの活性を阻害する。(肝炎 → 肝硬変 → 肝臓ガン)
  7. コーヒーにより糖尿病になりにくくなる。(糖尿病も肝臓ガンのリスク要因)
(*) カフェストールやカーウェオールは、インスタント・コーヒーや、フィルター(ペーパーフィルターなど)を使用して淹れたコーヒーにはほとんど含まれていないので、コーヒーの肝臓ガン予防効果への影響は薄いと思われる。

コーヒーの淹れ方も大切

コーヒーにはカフェインのほか様々な抗酸化物質やポリフェノールなどが100種類近くも含まれていて、肝臓の酵素にも影響を与えます。 そして、これらの物質のうちカフェストールとカーウェオールに肝臓ガンの発生を抑制する効果が期待されています。

カフェストールカーウェオールも、コーヒーの淹れ方によってコーヒーに含有される濃度が異なるため、これらの物質が肝臓ガン予防に効果を発揮しているとすれば、コーヒーの淹れ方も重要となります。

カフェストールやカーウェオールは、ギリシャ式コーヒーのようにコーヒー粉を煮込むタイプのコーヒーや、フレンチ・プレスを用いて成分を搾り出すようにして淹れたコーヒーに豊富に含まれます。

肝臓ガンのリスク要因

肝臓ガンのリスク要因は、B型肝炎・C型肝炎・飲酒・喫煙・肥満・糖尿病です。 原発性肝臓ガンの90%は、B型肝炎の予防接種・C型肝炎の感染予防・飲酒の抑制で予防できます。

© http://kenkounews.rotala-wallichii.com/coffee_liver-cancer_bmj_meta-analisys/