よく冷えた炭酸水だと水分補給が不十分となる恐れ

(2016年10月) "PLOS ONE" に掲載された Monell Chemical Senses Center(米国)の研究によると、飲み物の冷たさや炭酸の刺激によって喉の渇きが速やかに治まります。 これは逆に言えば、冷たい飲み物や炭酸飲料で水分を補給して脱水状態を解消しようとする場合に、水分補給が十分でなくても喉の渇きが治まってしまうということにもなりかねません。出典: Oral Cooling and Carbonation Increase the Perception of Drinking and Thirst Quenching in Thirsty Adults

研究の方法

20~50才の健康な男女98人が喉が渇いた状態となるように、一晩のあいだ飲食を控えてもらい、翌朝には研究チームが用意した軽い朝食(飲み物が無い)を食べてもらいました。 この時点で、被験者たちは非常に喉が渇いていました。

そして、ようやく400mlの水が配られて被験者たちは乾いた喉を潤せることになりました。 ただし、被験者たちには以下を含む(*)様々な水を飲んでもらいました:
  1. 常温(20~22℃)の水を飲むグループ
  2. よく冷えた(6℃の)水を飲むグループ
  3. 常温の炭酸水を飲むグループ
  4. よく冷えた炭酸水を飲むグループ
(*) 他の水は、酸味がある水・甘味がある水・渋味がある水・メントール(清涼剤)が入った水。

400mlの水を飲んでからしばらくして(各種の400mlの水でどれだけ喉の乾きが癒えたかを調べるために)各グループは好きなだけ水(常温の非炭酸)を飲むように指示されました。

結果

よく冷えた水や炭酸水を与えられた2つのグループ(2と3のグループ)は、常温の水や非炭酸水を与えられた2つのグループに比べて、400mlの水を飲んだ後に常温の非炭酸水を飲む量が少なくなっていました。 つまり、常温の水や非炭酸の水よりも冷水や炭酸水のほうが喉の渇きを治める作用が強かったということです。

水を飲む量が最も少なかった(水分補給の意欲を損なう恐れが最も強い)のは、よく冷えた炭酸水でした。

クリックでグラフ拡大。 グラフ左端の数字が400mL後に飲んだ常温の非炭酸水の量。 RT:常温、Cold:冷水、carb:炭酸、acid:酸味、astring:渋味、sweet:甘味。

常温の非炭酸水(RT)> 非炭酸の冷水(Cold)> 常温の炭酸水(RT Carb)> 炭酸の冷水(Cold Carb) という順で水を飲む量が減っていることが分かります。 常温の非炭酸水を飲んだ後と冷たい炭酸水を飲んだ後とで、100mL分ほども喉の乾きに差がついています。
また、 メントールで「冷たさ」を化学的に作り出した水を飲んだ場合にも、実際に冷やした水を飲んだときと同じ程度に喉の渇きが治まっていました。 このことから、喉の渇きが治まるかどうかに影響するのが、水の実際の温度ではなくて「冷たい」という感覚の知覚であると考えられます。

グラフA(左側)は、飲んだ人が感じた冷たさ。 メントール(menthol)入りの常温の水を飲んで感じた冷たさは、本物の冷水ほどではありません。

グラフB(右側)には、400mL後に飲んだ常温の非炭酸水の量が表示されています。 本物の冷水ほどではないけれども、水を飲む量が減っていることが分かります。
水の甘味・渋味・酸味(*)は、水が喉の渇きを治める作用に影響していませんでした。
(*)炭酸飲料の刺激は二酸化炭素の泡ではなく酸によるもの」 という研究と矛盾するように思えますが、今回の研究で用いられた酸性水はpHが4.0(温度は6℃)だったので、酸味による刺激が炭酸水に比肩するほどではなかったのでしょうか。 炭酸飲料の代表格であるコーラのpHは2.2~2.3です。