わずかな寒さを「痛み」として感じる理由

(2014年11月) 20℃を下回る程度のそんなに寒くない気温であっても「寒い」という感覚を「痛い」という感覚として感じる(寒さによる異痛症 "cold allodynia")人がいますが、"PNAS" 誌に掲載されたルンド大学(スェーデン)の研究で、そのメカニズムが特定されました。 マスタードやニンニクなどの刺激物に反応するのと同じ受容体が、寒さと痛みをつなぐリンクだったのです。

この研究グループは10年前に、マスタードとニンニクに反応する受容体(スパイスに含まれる刺激物が神経細胞をどのように刺激するのか)を特定しました。

それ以来、この受容体が寒さにも反応するのか否かが議論されてきましたが、今回の研究で寒さにも反応することが示されました。 ヒトの受容体タンパク質を抽出して人工の細胞膜に挿入すると、受容体が寒さに反応したのです。

マスタードとニンニクに反応する受容体

マスタードとニンニクに反応する受容体は、皮膚・膀胱・腸など多くの場所に存在します。 現在、複数の製薬会社がこの受容体をブロックして痒みや、尿漏れ、痛みなどを抑制する薬を開発しようとしていますが、研究グループは、この同じ受容体のブロックが寒さによる異痛症にも有効だと考えています。

この受容体は、気道を刺激する化学物質(香水・溶剤・タバコの煙・排気ガスなど)にも反応するので、そのような刺激に弱い人のための薬が開発されれば、気道が寒さに対して過敏である人にも、その薬を使える可能性があります。
コメント
研究者は次のように述べています:
「寒さによる異痛症は、慢性痛の患者や糖尿病性ニューロパチーなどのように神経系に異常をきたす病気の患者では非常に一般的です。 ガンの化学療法の副作用として寒さに対する過敏が生じることもあります。 マスタードやニンニク受容体が反応する低温であれば、さほどの低温ではなくても寒さによる異痛症が始まることがあります」