食事内容が大腸ガンのリスクに影響する理由はスフィンゴ脂質か

(2014年10月) "Journal of Clinical Investigation" オンライン版に掲載された Children's Hospital Oakland Research Institute の研究によると、スフィンゴリピド(スフィンゴ脂質)と呼ばれる脂質の一種が、食事・炎症・ガンの3つをつなぐリンクであるかも知れません。
スフィンゴリピド
スフィンゴイドと脂肪酸が結合してできたものがスフィンゴリピドです(ソース)。 したがって今回のニュースは、オメガ3脂肪酸とかオメガ6脂肪酸とか飽和脂肪酸とか、そういう脂肪酸の話よりは大きな規模での話なのでしょう。
スフィンゴリピドの代謝物には、哺乳類由来の(ヒトの体内で生産されるほか、牛や豚などの哺乳類の肉にも含まれている)スフィンゴシン一リン酸(S1P)と、大豆などの植物性食品に由来するスフィンガジエン(sphingadiene)などがありますが、今回の研究によると、S1P が結腸の炎症や、炎症性大腸疾患(IBD)、炎症に起因する結腸ガンを促進する一方で、スフィンガジエンにはこれらを抑制する作用があると思われるのです。

炎症とガンのあいだに関係があることは100年以上も前から認識されていました。 この関係は特に結腸ガンで顕著で、IBD 患者では結腸ガンのリスクが増加することが知られています。 産業化がなされた国において IBD と結腸ガンが増加していることから、食事や栄養の変化によって大腸炎や大腸炎に起因する結腸ガンのリスクが増大するのだと思われます。

スフィンゴリピドは、プログラム細胞死、ストレス応答、免疫、および炎症を調節する能力を介してガンの発生に関与します。 スフィンゴリピド代謝物は、結腸ガンに特に密接に関係しています。 というのも、腸の上皮細胞はスフィンゴリピドが分解されて生じるスフィンゴリピド代謝物に直接さらされるからです。

哺乳類由来のスフィンゴリピドの最終分解生成物である S1P は、炎症誘発性シグナル作用を持つタンパク質であり、細胞の成長と発ガンを促進します。 結腸ガンが発生および進行するときには、腸粘膜に S1P が蓄積します。 腸組織に遺伝子的な変化が生じ、S1P を生み出す酵素が増加する一方で、S1P の分解に必要な酵素である SPL(S1P 分解酵素)が減少するためです。

研究の内容
今回の研究では、S1P の蓄積が炎症と発ガンに及ぼす影響を調べるために、遺伝子改造により SPL を失ったマウスを作り出しました。 そして、この遺伝子改造マウスのグループと普通のマウスのグループとで、結腸ガンの原因となる腸炎を引き起こす化学物質に対する反応を比較しました。

その結果、この規制飼育(両グループを同じエサを与えて同じ環境で飼育したということでしょう)において、遺伝子改造マウスには炎症が多く見られ、腫瘍の発生率も高くなっていました。

そして研究チームは、マウス実験と細胞培養実験とを組み合わせて、S1P の下流において生じる一連のプロセスによって、ガンの形成を抑制する機能を持つ2種類のタンパク質が抑制されていることを突き止めました。

また、S1P にガンを促進する作用があるのに対して、大豆や植物由来のスフィンゴリピドであるスフィンガジエンは、マウスのエサに混ぜて与えても S1P へと代謝されないばかりか、腸において SPL を増量して S1P の代謝を強化する(S1P の量を減らす)作用を示しました。

スフィンガジエンで処置したマウス(sphingadiene treatment of mice)では、炎症、IBD の兆候、および腫瘍の発生率が減少しました。

さらに、今回の研究の一環として IBD 患者を対象に行われた調査でも、IBD 患者は対照群(IBD では無い人)に比べて、結腸における S1P 関連の遺伝子発現量が多いという結果でした。

これらの結果から、食品に含まれるスフィンゴリピドの種類によって結腸ガンの発生が促進されたり阻害されたりする可能性が示唆されます。