昏睡から目覚めさせるのに肉親や家族の語りかけが有効

(2015年1月) "Neurorehabilitation and Neural Repair" 誌に掲載されたノースウェスタン大学の研究で、脳の外傷が原因で昏睡状態に陥った患者に対して肉親や家族が語りかけることによって、昏睡からの目覚めが促進され、昏睡から目覚めた後の回復も早まるという結果になりました。

昏睡状態の患者は通例、最低限に意識を回復した状態または植物状態のいずれかへと移行し、その状態が数週間から数年間にわたって続きます。

研究の方法

この研究では、交通事故などによる外傷性の非開放性頭部損傷のために昏睡状態に陥った患者15人(平均年齢35才。 男性12人)を2つのグループに分けて、一方のグループ(8人)にのみ Familiar Auditory Sensory Training(FAST)という治療を6週間にわたって行いました。

患者たちは最低限に意識を回復した状態または植物状態にありました。 FASTによる治療が行われたのは外傷を負ってから平均で70日が経過した頃です。

FASTでは、患者が家族や肉親と共有する思い出をテープレコーダーなどに録音して、それを患者に繰り返し再生します。 今回の試験では、肉親に8つ以上の話を録音してもらい、それをヘッドホンで1日4回患者に聞かせました。
録音する話の内容
患者と家族・肉親が共有する思い出というのは例えば、誰かの結婚式や一緒に行ったドライブなどです。 話のネタは、アルバムを見て探すと良いでしょう。 患者がその時の情景(気温や音など)を思い出すように克明に描写します。 また、話すときの口調が自然なものとなるように練習し、話の中では患者の愛称を用いるようにします。
結果

FASTによる治療を受けたグループの方が、もう一方の何もしなかったグループに比べて意識を回復するのが早く、意識を回復してからも、周囲の環境の認識や会話の受け答えなどが良好でした。

研究者によると、FASTで肉親の話を聞くことによって長期記憶を司る脳の領域が刺激されるのだと考えられます。 肉親が名前を呼ぶのを聞いた患者では、脳において神経の活性(MRIで計測)が増大していました。

今回の試験の患者の1人は「昏睡状態にあるときに家族や肉親の声を聞かされたのを覚えている」と語っています。

FASTは、外傷以外の原因(脳卒中など)で昏睡状態になった患者にも有効かもしれません。