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通勤手段を改善したときの健康効果は大気汚染によるダメージを上回る

(2016年5月) "Preventive Medicine" 誌に掲載されたケンブリッジ大学などの研究によると、大気汚染が懸念される都会であっても、自動車の代わりに自転車や徒歩で通勤することによる健康効果が大気汚染による健康への悪影響を上回ります。
運動が糖尿病・心臓病・ガンの予防に有効であることが知られています。 そして運動量を増やす方法の1つが通勤手段の改善です。 通勤手段の改善とは、マイカー通勤を止めて自転車・徒歩・公共交通機関を用いて通勤することです。
これまでの研究との違い

これまでにも複数の研究で通勤手段の改善が健康に良いことが示されていますが、これらの研究は欧州や米国など大気汚染が比較的軽度な先進国で行われたものばかりであり、大気汚染がひどい都市でも同じことが言えるかどうかは不明確でした。

今回の研究では、大気汚染の程度が様々に異なる世界各地の都市において通勤手段の改善が健康にとってプラスとなるかマイナスとなるかを調べました。

研究の方法

これまでに行われた疫学的な研究やメタ分析のデータを用いて、通勤手段を改善した場合に必要となる運動の強度と時間や大気汚染の程度を考慮しつつ、世界各地における通勤手段改善のメリットとデメリットをコンピュータで計算しました。

結果

世界の都市の大部分において、通勤手段を改善したときに運動による好影響が大気汚染による悪影響を上回るという結果でした。

30分かけて自転車で通勤する場合をシミュレートしたときに、通勤手段の改善による好影響よりも大気汚染による悪影響の方が大きいという計算になったのは、大気汚染が極度にひどい1%の都市だけでした。

例えば、ロンドンでは通勤手段の改善によるメリットが大気汚染によるデメリットを安定的に上回っていましたし、大気汚染の程度が世界で最もひどいとされる都市の1つであるデリー(インドの首都)であっても、通勤に要する時間が1週間あたり5時間以内であれば通勤手段の改善によるメリットが大気汚染によるデメリットを上回っていました。

留意点
  • メッセンジャー(自転車便)のように都心部で長時間を自転車に乗って過ごす人の場合、その都市の大気汚染度が最高レベルであれば、大気汚染の有害性により運動による健康効果が相殺される可能性があります。
  • 1つの都市内でも場所や時間帯により大気汚染の程度が異なりますが、今回の研究ではそこまでは考慮していません。
  • 病歴や運動習慣などの個人差によっても、通勤手段の改善がもたらす健康効果には違いがあると考えられます。 運動習慣がある人よりも運動習慣が無い人の方が、通勤手段の改善がもたらす恩恵は大きいことでしょう。
コメント
研究者は次のように述べています:

「今回の研究では大気汚染の程度に関わらず通勤手段の改善が有益であることが示されましたが、だからといって大気汚染を放置しておいて良いということにはなりません。 マイカー通勤を思いとどまらせ、自転車や徒歩での通勤を促すような政策が望まれます」

「都心部における大気汚染の主因の1つが自動車やバイクから出る排気ガスですから、通勤手段を改善する人が増えれば大気汚染が改善されます」