銅がアルツハイマー病の原因に?

(2013年8月) "Proceedings of the National Academy of Sciences" 誌に掲載された研究(マウス実験とヒトの脳細胞を使った生体外実験)によると、銅がアルツハイマー病の発症と進行の原因となります。 銅が脳内の毒性タンパク質(アミロイドβ)の排除を阻害し、蓄積を加速するというのです。

予備知識
アミロイドβとは

アミロイドβは、細胞活動の副産物として生じるタンパク質で、アルツハイマー病の原因であると考えられています。 参考記事: アミロイドβは悪者ではなかった?

銅について

銅はいたるところに存在します。 水道管が銅で出来ていれば水道水中にも含まれますし、サプリメント・赤身の肉・貝類・ナッツ類・果物・野菜にも含まれています。 そして、銅は体にとって必要な栄養素でもあり、神経伝導・骨の成長・結合組織(骨・軟骨・血・脂肪)・ホルモン分泌などにおいて重要な役割を果たしています。

研究の内容
健康なマウスの実験

研究グループはまず、健康なマウスの一群に銅が含まれる飲料水を3ヶ月間にわたって与えるという実験を行いました。 飲料水中の銅の量は、米国の環境保護局が定める水質基準の1/10と非常に低いものであり、一般的な人が普通の食事から摂取するのと同程度だと考えられます。

飲料水からマウスの体内に入った銅は、血流に入り込んで、脳に血液を供給する血管、特に毛細血管でできた細胞の「壁」(血液脳関門のことでしょう)のところに集まります。 この「壁」は、脳を防御するシステムの中でも重要な部分にあたり、脳組織への分子の出入りを調節しています。 今回のマウス実験の場合、「壁」である毛細血管は、銅が脳に入るのを防ぎましたが、長期間を経て銅が「壁」に蓄積して、毒性を発揮するようになりました。

すなわち、通常であれば、アミロイドβは LRP1(リポタンパク質レセプター関連タンパク質1)というタンパク質の1種と結合して、血流を通って脳から除去されるところが、銅の酸化作用によって LRP1 の機能が撹乱されたために、この除去メカニズムが阻害されるようになったのです。 研究グループは、この現象をマウス実験とヒトの脳細胞の両方で確認しました。

アルツハイマー病のマウスの実験

研究グループは次に、既にアルツハイマー病を発病しているマウスに対する銅の影響を調べました。 これらのマウスでは、血液脳関門が既に壊れて「漏れ」が生じている状態でした。 血液脳関門が壊れた原因は、加齢および毒性物質の蓄積の組み合わせだと考えられます。 そして、血液脳関門が壊れているために、銅などの元素が自由に脳組織内に入り込める状態になっていました。

そして、このような状態になっているマウスの脳において、アミロイドβの生産を増加させる神経細胞の活性を、銅が刺激していたのです。 さらに、銅はアミロイドβに作用し、アミロイドβ同士が結合して巨大化し、脳の掃除システムでは排除できないような渋滞状態が生じる原因にもなっていました。

解説
今回の研究は動物物実験によるものであり、ヒトには当てはまらない可能性もあります。 また、研究者は次のように述べています:

「銅は人体にとって必要な金属です。 そして、銅がアミロイドβの蓄積に及ぼす影響が、長期間にわたって(過度に)銅に暴露されることによってのみ生じることは明らかです」

「したがって大切なのは、不足でも過剰でもない適切な量の銅を摂取することです。 今のところ、その『適切な量』はわかっていませんが、銅の摂取量を調節する決め手となるのは食事でしょう」