抜けた歯の数が多い高齢者では認知症のリスクが増加

(2015年3月) "PLOS ONE" に掲載された 復旦大学(中国)の研究で、抜けた歯の数が多い高齢者では認知症のリスクが増加するという結果になりました。
Luo J, Wu B, Zhao Q, Guo Q, Meng H, et al. (2015) Association between Tooth Loss and Cognitive Function among 3063 Chinese Older Adults: A Community-Based Study. PLoS ONE 10(3): e0120986. doi:10.1371/journal.pone.0120986 (Licensed under CC BY 4.0)
研究の方法
この研究では中国に住んでいる60才以上(平均年齢71.3才)の高齢者 3,063人(男性45.7%)を対象に、残っている歯の数(親知らずを含む)と認知機能の状態を調査し、両者の関係を照らし合わせました。 認知機能の状態は次の3つに分類されました: ①健常、②軽度認知障害(MCI)、③認知症。
認知症の診断基準としては DSM-IV を、MCIの診断基準としては Petersen(MCIという概念を最初に提唱した人)によるものを用いました。
結果

18.1%にあたる454人がMCIで、3.9%にあたる120人が認知症でした。 抜けていた歯の平均本数は次の通りでした:

  • 3,063人全体: 10.2本
  • 認知症のグループ: 18.7本
  • MCIのグループ: 11.8本
  • 健常者のグループ: 9.3本
性別や、年齢、教育水準、喫煙習慣、生活習慣病などのリスク要因を考慮したうえで分析したところ、抜けた歯の本数が16本超だと認知症のリスクが統計学的に有意となる程度(56%)に増加するという結果でした。
入れ歯を抜けた歯と残っている歯のどちらに分類したのかについては原文に記載がありませんが、たぶん入れ歯も抜けた歯としてカウントされていると思います。
考えられる理由
歯の残り本数が少ないと認知症のリスクが増加する理由としては、次のような可能性が考えられます:
  • 歯周病の原因菌に対して生じる慢性的な全身性の炎症。
  • 歯周病による脳卒中リスクの増加(認知症の種類によっては脳卒中がリスク要因となります)。
  • 口腔内に存在する細菌が一時的な菌血症(本来は無菌であるはずの血流中に細菌が存在する状態)によって脳にまで拡散する。
  • 口腔内に存在する細菌が三叉神経を通って脳にまで達する。
  • ビタミンBなどの栄養不足が歯牙喪失(歯が抜けること)と認知症と、両方の原因となる。