鬱病に鍼治療が有効

"PLOS Medicine" (2013年9月)に掲載された英国の研究によると鬱症状に鍼治療(東洋医学で使うハリ)が心理療法と同程度に有効かもしれません。 3ヶ月間にわたって鍼治療またはカウンセリングを受けたグループでは3人に1人が鬱症状が治まったのに対して、従来の治療(抗鬱剤?)しか受けなかったグループで鬱症状が治まったのは5人に1人だったのです。

研究者は次のように述べています:
「現在では、針治療やカウンセリングも鬱に対して臨床的に有効であることが知られています。 様々な治療(様々な抗鬱剤?)を受けて思わしい効果のなかった人は、これらの治療法を試してみると良いでしょう」
鬱症状に対する針治療の効果を調べた研究はこれまでにも複数がありますが、どれも小規模なうえに、鍼治療と他の治療の効果の比較が行われておらず、結果も確定的ではありませんでした。

研究の内容
今回の研究では、中度~重度の鬱症状の患者755人を、週に1度の鍼治療を受けるグループ(302人)、週に1度のカウンセリングを受けるグループ(302人)、および普通の治療だけを受けるグループ(151人)に分けました。 そして3ヶ月間(12回)にわたって、それぞれの治療を続けました。

755人のうち、研究期間前の3ヶ月間に抗鬱剤を服用していたのは約70%、鎮痛薬を服用していたのは約50%でした。 研究期間中にも、これらの薬の使用は禁止されていませんでした。

研究開始の時点における755人の鬱スコアの平均は16点でした。 この鬱スコアの範囲は0~27点で、スコアが高いほど鬱症状が重症ということになります。 16点というのは、そこそこ重症の鬱です。

3ヵ月後、鍼治療のグループの平均スコアは9点に、そしてカウンセリングのグループでは11点にまで下がっていました。 一方、普通の治療を受けたグループのスコアは13点でした。 9点というのは、軽度の鬱に分類されます。 11点と13点は中程度の鬱です。 ただし、鍼治療とカウンセリングの効果の差は偶然である(統計的に有意とは言えない)可能性があります。

この結果から、鍼治療でもカウンセリングでも、普通の治療に比べて鬱症状が大きく改善すると言えます。 さらに、鍼治療とカウンセリングによる鬱症状改善の効果は、治療を終えた後も3ヶ月間は効果が持続しました。

研究グループによると、鍼治療によって鬱症状が消滅するのは7人に1人、カウンセリングによって鬱症状が消滅するのは10人に1人です。

研究に対するコメント
コロンビア大学の精神病の専門家は次のように述べています:
「今回の研究結果から、鬱症状の治療には薬物以外の選択肢もあると言えます。 抗鬱剤の効果が無い場合、別の抗鬱剤に切り替えるというのも1つの選択肢ですが、今回の結果からすると、鍼治療やカウンセリングなども有効な選択肢となります。

ただし、今回の研究において、研究参加者の過半数が研究期間中にも抗鬱剤を服用していたことから、カウンセリングや鍼治療が完全な代替療法になるとは言えません。(抗鬱剤と、カウンセリングや鍼治療との併用が望ましい)

また、今回の研究では、どのようなタイプの患者が鍼治療やカウンセリングに適しているのかも明らかになっていません」
これに対して研究者は、「患者の望む治療法を選ばせれば良い」としています。

鍼治療のリスク
2012年に発表された英国の調査で、325件の鍼治療トラブルが報告されています。 325件のうち、100件は体に刺した針が体内から抜けないというもの、63件は患者が意識を失ったというもの、そして99件は患者の意識が朦朧となったというもの、そして15件ほどが気胸でした。 気胸は、胸に針を刺すときに深く刺しすぎたのが原因です。

ただ、この調査では、全部で何件の鍼治療が行われたかが不明なので、鍼治療トラブルが全体に占める割合もわかっていません。 例えば1000件しか鍼治療が行われていないのであれば、鍼治療を受けてトラブルになる率は30%(3人に1人)ほどですし、100万件の鍼治療が行われた中で325件だけのトラブルだったのであれば、鍼治療を受けて事故が起きる率は0.03%(3000人に1人)ほどでしかないというわけです。

鍼治療には、他にもひりひり感や感染症などのリスクがありますが、資格を有する適正な施術者が行うぶんには、鍼治療は低リスクです。