鬱病は感染症に対する防御システムだった!?

(2012年10月) アリゾナ大学の研究によると、鬱(うつ)は感染症に対抗するために進化した結果の状態であると考えられます。

急激なストレスは、鬱状態と免疫系の活性化との両方を引き起こします(慢性的なストレスでは免疫系が弱ることもあります)が、この研究によると、欝状態も免疫系の活性化も体が感染症に対抗するためのものだというのです。

「急激なストレス」と「鬱病」と「免疫系が活性化」の関係

「急激なストレス」と「鬱病」と「免疫系が活性化」の関係を理解するにはまず、急激なストレスと感染症の関係を理解する必要があります。

私たちの祖先が生きていた環境では恐らく、急激なストレスは肉体的な危害や怪我の脅威が迫ったときに生じるのが普通だったはずです。 そして、怪我をするとたちまち感染症にかかって死んでしまうという世界でした。

つまり、「急激なストレス → 感染症」という図式が成立するわけです。

そして、この感染症に対して、ヒトの体は免疫の活性化で対抗しようとします。

そこで、「急激なストレス → 感染症 → 免疫の活性化」という図式が成立します。

それでは「鬱病」は、この図式にどのように関係してくるのでしょうか?

鬱病の症状といえば、社会的引きこもり・無気力・無関心などですが、 研究チームは、これらの鬱病の症状自体も感染症対策なのではないかと考えています。

例えば、無気力。 この無気力というのは、すべてのエネルギーを感染症との闘いに費やすうえで必要だったと考えられます。 そして、社会的引きこもりにしても、引きこもることで、感染で弱っている体がさらにまた別の病原菌にさらされるリスクを最小限に保つことができます。

このように、鬱病という病気は、免疫力の活性化と同様に、その病気自体が感染症に対抗するためのシステムだったと考えられるというわけです。
前述の図式になぞらえれば、「急激なストレス → 感染症 → 免疫の活性化&鬱病」ということになりますね。
鬱病は対感染症システムの誤作動?

それでは何故、このように感染症への対抗手段であったはずの鬱病が、肉体的な危険が迫っておらず、従って感染症のリスクも生じていないときに発症するのでしょうか?

この問いに対して、研究チームは「煙感知器の原則」という説を唱えています。 煙感知器の原則とはすなわち、「必要なときに作動しないよりは、必要でないときに誤作動する方がマシ」というものです。

急激なストレスが生じたときに常に怪我をするわけではないので、急激なストレスが生じたけれども免疫系の活性化は不要というケースはありますが、怪我をしているのに免疫系が活性化していないという状況が一度でもあっては大事(おおごと)なので、急激なストレスと常に連動して免疫系が活発化する個体は有利だったと考えられるというわけです。
鬱病の人は、その「煙感知器」の感度が良すぎるということでしょうか。 怪我はしていないけど、「誤報」のせいで引きこもって、無気力・無関心になって、体の修復に全霊を傾けている。