感染症やストレスなどでミクログリアが変化するために鬱病になる?

(2015年10月) "Trends in Neurosciences" 誌に掲載されたイスラエルの論文によると、鬱(うつ)病の原因にミクログリアが深く関与している可能性があります。

ミクログリアとは

ミクログリアは脳に存在する免疫細胞で脳細胞の10%を占めています。 ミクログリアは細菌やウイルスの侵攻を食い止めるだけでなく、脳に生じた損傷の修復やニューロン同士の接続にも関与しています。 したがってミクログリアは脳が正常に機能するのにも重要な存在だということになります。

研究者は次のように述べています:
「ヒトの研究(死者の脳組織を用いたものや脳撮影機器を用いたもの)でも動物実験でも、ミクログリアの構造と機能に変化が生じると脳と行動の正常なプロセスを調節できなくなり抑鬱が生じ得ることが示されています」
ミクログリアの変質と抑鬱

感染症・外傷・加齢・自己免疫疾患(多発性硬化症など)・神経変性疾患(アルツハイマー病など)の患者では高い確率で抑鬱が見られますが、これらの身体異常においてミクログリアが変化することが知られています。 ミクログリアが丸みを帯びて大きくなり、脳内における炎症応答をコントロールする化合物を分泌するのです。

また、慢性的な予期できぬ心理的ストレス(*)はヒトにおける抑鬱の主因の1つですが、このようなストレスを被った後にもミクログリアの形状と機能が変化することがあります。 この論文の研究者本人が最近行った実験でも、この種のストレスを受けた後に一部のミクログリアが死滅し、死滅しなかったミクログリアも変質して小さくなるという結果になっています。

(*) 慢性的な予期できぬ心理的ストレス - "chronic unpredictable psychological stress"。 動物実験において何日間にもわたり、ランダムなタイミングで大きな音や電気ショックなどのストレスを与えるということのようです。

ヒトで言えば、ヘリやバイクの騒音あるいは借金取りのような突発的なストレス源が日常的に存在する状態のことでしょうか。
鬱病の種類に応じた治療を

このように、抑鬱を引き起こしているのがミクログリアの活性化(大きくなる)である場合と衰萎(小さくなる)である場合とがあると考えられます。 したがって、1種類の薬がすべての抑鬱に対して同等の効果を発揮するとは考えられません。

研究者は、患者のミクログリアの状態をまず検査した上で患者に合った治療法(ミクログリアが過剰に活性化しているのであれば遮断し、抑制されているのであれば刺激する)を用いるべきであると主張しています。