糖尿病の発症を促進する酵素 "12-LO"

(2014年8月) "Molecular and Cellular Biology" 誌オンライン版に掲載されたインディアナ大学の研究によると、12-LO と呼ばれる酵素が、膵臓(すいぞう)細胞において肥満により誘発される酸化ストレスを助長することによって、糖尿病前症糖尿病を引き起こします。
12-LO とは
12-LO は正式名称を「12-リポキシゲナーゼ」と言い、肥満者でのみ膵臓のβ細胞に存在することが過去の研究で明らかにされています。
研究グループによると、12-LO の酵素作用が、膵臓細胞を害するある種の小分子の生産の最終段階にあたります。 今回の発見から、12-LO を阻害することによって糖尿病を予防したり治療したり出来る薬の開発が期待されます。

12-LO の酵素作用により生じる有害な小分子というのは、HETE(ヒドロキシエイコサテトラエン酸)という物質のことで、この HETE がミトコンドリアを傷つけるために、膵臓の細胞が十分な量のインスリンを作り出すのに必要なエネルギーが得られなくなります。

研究者は次のように述べています:

「β細胞中の 12-LO が高脂肪食による糖尿病前症の原因であることを示したのは今回の研究が初めてです。 今回の発見により、『実質的に全ての形態(1型と2型?)の糖尿病および糖尿病前症において機能が損なわれる細胞は主としてβ細胞である』という考えの信憑性が深まったと思います」


研究の内容
今回の研究では、遺伝子改造により膵臓細胞に 12-LO を一切持たないマウスを作り出し、このマウスを2つのグループに分けて低脂肪食または高脂肪食のいずれかを与え、普通のマウスに高脂肪食を与えた場合と比較するという実験を行いました。

その結果、高脂肪食を与えた場合には、普通のマウスも遺伝子改造マウスも肥満し、インスリン抵抗性が生じました。 ところが、膵臓のβ細胞を検査(顕微鏡検査と分子分析)したところ、普通のマウスのβ細胞では酸化によるダメージが見られ、12-LO と HETE がβ細胞の機能不全を引き起こしていた一方で、膵臓に 12-LO を持たない遺伝子改造マウスのβ細胞は一切損なわれておらず健康だったのです。

この実験で高脂肪食に使用した脂肪は大部分が飽和脂肪酸(肉や乳製品に多く含まれる)でした。 研究者によると、今回の実験で用いたのが不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸など)であれば、普通のマウスでもβ細胞が損なわれなかった可能性があります。