糖尿病患者で心臓疾患が増加するメカニズムが明らかに

(2013年9月) 糖尿病の人では心臓疾患のリスクが4倍にもなり、糖尿病の人の死因は65%以上が心臓疾患または脳卒中ですが、"Nature" 誌に掲載された米国の研究により、糖尿病で心臓疾患のリスクが増加する仕組みが解明されました。

糖尿病患者に見られる中~高血糖値によって、心臓の筋肉細胞に存在する糖分子(O-結合型Nアセチルグルコサミン(O-GlcNAc))が CaMKII(カルシウム/カルモジュリン依存性プロテイン キナーゼII)というタンパク質の特定の場所に融着していたのです。

CaMKII には、カルシウム量・電気活動・心臓の鼓動を調節するという大切な役割がありますが、CaMKII に O-GlcNAc が融着することによって CaMKII の活性が慢性的に過剰となり、CaMKII がコントロールする繊細なカルシウムシグナル伝達系に異変が生じます。 そして、この異変が引き金となって、わずか数分で正真正銘の不整脈が起こるのです。

このことは、糖尿病と診断されていた死亡者たちの心臓と脳の両方において、O-GlcNAc が融着した CaMKII の量が増加していたことにより裏付けられました。 O-GlcNAc が融着した CaMKII の量は、死亡者のなかでも心不全のあった糖尿病の人で特に増加していました。

研究グループは、CaMKII を阻害する、あるいは O-GlcNAc の CaMKII への融着を阻害することで、この不整脈の予防に成功しました。

この研究では、ヒトのタンパク質と組織やネズミを使った実験などが行われ、①O-GlcNAc が CaMKII のどの部分に融着するのか、②融着によって CaMKII が活性化する仕組み、③融着によってカルシウムによる不整脈が発生する仕組みが明らかにされました。

研究者は次のように述べています:
「今回の発見から糖尿病性の心血管疾患の薬が開発されることが期待できます。 糖尿病では、心臓以外にも、網膜や、神経系、腎臓などの組織に問題が生じますが、今回の発見は、これらの組織におけるブドウ糖毒性の治療薬の開発にもつながる可能性があります」
研究グループは今後、糖尿病患者に見られる神経症にも O-GlcNAc の CaMKII への融着が関与していないかどうかを調べる予定です。