(2017年7月) 糖尿病患者に歯周病が多いことが知られていますが、"Cell Host & Microbe" に掲載されたペンシルバニア大学の研究(マウス実験)によると、糖尿病患者に歯周病が多いのは血糖値が上がることで口の中に住む細菌の種類構成に変化が生じるためかもしれません。
実験その1
方法
マウスを人為的に糖尿病にして、健康なマウスとで口腔内に住む細菌の種類構成を比較しました。
結果
糖尿病にされる前には健康なマウスと口内細菌の種類構成に違いがなかったのに、糖尿病にされてしまった後には口内細菌の多様性が健康なマウスよりも低下していました。 そして糖尿病マウスは歯周病になり、歯を支える骨が失われたりIL-17(*)が増加したりしていました。
(*) ヒトでも歯周病患者で増加が見られる。
実験その2
方法
無菌マウスを2つのグループに分けて、一方のグループには健康なマウスの細菌を移植し、もう一方のグループには糖尿病のマウスの細菌を移植しました。
結果
健康なマウスの細菌を移植されたグループに比べて、糖尿病マウスの細菌を移植されたグループは歯を支える骨が42%少なくなり、炎症マーカーも増大しました。
実験その3
方法
糖尿病マウスを2つのグループに分けて一方のグループにのみIL-17の作用を抑える抗体を注射しました。 そして、両グループの口内細菌をそれぞれ別の無菌マウスに移植してみました。
結果
IL-17抗体を注射された糖尿病マウスの口内細菌を移植された無菌マウスのほうが、失われる骨の量が少ないという結果でした。
結論
糖尿病により口内細菌の種類構成に変化が生じ、その変化が炎症的な変化を促進して歯周病が悪化するのだと考えられます。
今回の研究ではIL-17抗体が糖尿病に起因する歯周病に対して有効でしたが、IL-17が免疫機能において重要な役割を果たしていることから、糖尿病患者の歯周病を抑制するのにIL-17抗体は不向きであると思われます。
研究者は、血糖コントロールをきちんと行い、歯磨きなどで口腔の衛生状態を保つことを推奨しています。