糖尿病患者が不安感や抑鬱に陥りやすい原因は脳のインスリン抵抗性?

(2015年3月) 糖尿病患者は他の慢性疾患の患者に比べて不安感や抑鬱に陥りやすいことが知られていますが、"Proceedings of the National Academy of Sciences" に掲載された Joslin Diabetes Center(ハーバード大学)の研究でその理由が明らかになった可能性があります。

遺伝子改造マウスを用いた実験

この研究では、遺伝子改造により脳に限定してインスリン抵抗性を生じさせたマウスと普通のマウスとを用いて、ストレス下における振る舞いの違いを比較するという実験を行いました。 この実験は、不安感や抑鬱を治療する薬の効果を調べるために一般的に用いられるのと同じものです。

遺伝子改造をしたマウスも、若いうちは普通のマウスと同様の振る舞いを示していたのですが、生後17ヶ月(ヒトの中年後期に相当する)になった頃から行動障害(不安・抑鬱関連の行動ということでしょう)を示すようになりました。

研究者は次のように述べています:
「今回の研究は、脳のインスリン抵抗性が行動の変化を生み出す可能性を初めて直接的に示した研究のうちの1つです」
ドーパミンの分解が速まるのが行動障害の原因?

行動障害を示すようになった遺伝子改造マウスの脳を検査したところ、ミトコンドリアの代謝に複数の変化が生じていました。 その変化のうちの1つは、ドーパミンという神経伝達物質を分解する2種類の酵素の生産量が増加するというものでした。

行動障害を示すようになった遺伝子改造マウスでもドーパミンの放出量は変わっていませんでしたが、ミトコンドリアに生じた変化のためにドーパミンが分解されるペースが速くなっていました。

さらに、ドーパミンが長持ちしないのが行動障害の原因ではないかと考えた研究グループが、ドーパミンの分解を遅くする作用を持つ抗鬱剤を遺伝子改造マウスに投与したところ、行動障害が部分的に解消されました。

年齢の疑問

行動障害の見られなかった若い遺伝子改造マウスでも、行動障害が表れていた中年マウスと同じような変化が脳細胞に生じていました。

加齢によって行動障害が表面化する理由は不明ですが、この現象はマウスを用いた神経疾患の研究では一般的なものですし、ヒトの神経疾患でも同様の事例が存在します。