半数近くの糖尿病患者で心筋細胞が徐々に死滅中だと思われる

(2014年9月) "Circulation" 誌オンライン版に掲載されたジョンズ・ホプキンス大学の研究によると、糖尿病の人に心臓病が多いのにはコレステロール以外にも理由がありそうです。

糖尿病患者においては心血管疾患が主な死因となっており、その理由としては主に、アテローム性動脈硬化が挙げられています。

しかし今回の研究では、多くの糖尿病患者においてコレステロールやアテローム性動脈硬化とは無関係に心不全のリスクが増加しており、その原因が心臓細胞の死滅である可能性があります。

この研究で行われた超感度検査(ultra-sensitive test)において、調査対象となった糖尿病患者の50%近くで、心臓細胞が死滅したときに血中に放出されるトロポニンというタンパク質が微量に検出されたのです。
トロポニンの検査
血中トロポニンの検査は、胸の痛みで緊急治療室を訪れた患者に対して行われます。 心筋に損傷が起こると心臓の細胞からトロポニンが流出するためにトロポニン血中量が増加するため、トロポニン血中量が増加していれば心臓発作が疑われます。

今回の研究で用いられたトロポニン測定法は、従来の測定法の10倍も敏感で、ごく微量のトロポニンであっても検出します。 このトロポニン測定法は米国では未だ市販されていません。
トロポニン測定の対象となったのは Atherosclerosis Risk in Communities Study(ARIC)と呼ばれる研究に参加した 9,000人超で、測定は6年の期間を挟んで2回行われました。 糖尿病患者は健常者に比べて、トロポニン血中量が増加している率が2.5倍でした。

ARIC の14年間分の追跡調査のデータを調査したところ、糖尿病患者のうちトロポニン血中量が増加している人では(そうでない糖尿病患者に比べて?)心不全になるリスクが6倍に、そして心臓発作を起こすリスクが4倍に増加していました。 糖尿病前症の人でもリスクが増加していました(糖尿病前症のトロポニン血中量に関しては原文に記載なし)。

今回の結果から、糖尿病患者の体では高血糖による心筋の損傷が進んでいて、それが原因で心不全のリスクが増加しているという可能性が示唆されます。

研究者は次のように述べています:

「糖尿病患者の体では、これまで知られていなかった形で心筋が徐々に死滅しているようです。 糖尿病患者にはスタチン(コレステロール低下薬)が処方されるのが一般的ですが、この心筋死滅を防ぐのにスタチンだけでは不十分かもしれません。 今回の研究から、心臓に微小血管性の損傷が加わるのが心不全や死亡の原因になっていると思われるからです」