食物繊維が足りないと腸内細菌が腸を食べ始める

(2016年11月) "Cell" 誌に掲載されたミシガン大学の研究で、食物繊維が不足していると腸内細菌が腸を食べ始めるという驚愕の事実が明らかになりました。

食物繊維は腸内細菌のエサなので、食物繊維を食べない人では腸内細菌のエサが不足するということになります。 そうして飢餓状態に陥った腸内細菌が宿主の腸の粘膜を食べ始めるというのです。 すると腸のバリア機能が損なわれ、人食いバクテリアと化した腸内細菌が結腸壁に感染することもあります。
「腸内細菌を味方につけるには食物繊維を食べ続けるしかない。食わなきゃ食われる、食うか食われるかだ」 というわけです。
わずか数日間で

研究チームはまず、腸内細菌を持たない特別なマウスにヒトの腸内に生息している14種類の細菌を移植し、様々な食物繊維を与えたり与えなかったりしたときの腸内細菌の振る舞いを調べるという実験を行いました。

その結果、食物繊維を15%含有する食事を与えられたマウスでは、腸粘膜の層が厚みを保ったままだったのですが、食物繊維を含有しない食事を与えられたマウスでは、わずか数日間のうちに腸内細菌が腸粘膜を食べ始めました。

加工食品の食物繊維は腸内細菌のエサにならない

精製度が高い水溶性食物繊維(一部の加工食品や健康食品に用いられているタイプの食物繊維)を含有する食事をマウスに与えたところ、食物繊維を含有しないエサを与えた時と同様に腸粘膜の層が腸内細菌により侵食されました。

腸内細菌の変化

マウスに与える食事(食物繊維の種類や量)を変更すると、それに応じてほぼ1日のうちに腸内細菌の種類構成に変化が生じました。 腸内細菌によって好みのエサが異なるために、マウスの食事に含まれる成分に応じて、優勢となる腸内細菌の種類が変わります。

今回の研究で、腸の粘膜層を構成する糖タンパク質を分解できるのは腸内細菌は4種類だけでしたが、これらはいずれも食物繊維が少ない、あるいは全く無い場合に優勢となる細菌でした。

この部分を読むと、同じ種類の腸内細菌が食物繊維の有無によって人食いバクテリアになったりならなかったりするのではなく、食物繊維が欠乏すると腸粘膜を侵食するタイプの細菌が増えるということのようにも思えます。

冒頭の部分は私が大げさに書きたてたというわけではあまりなく、ほぼ原文の通りです。 腸内細菌を個別的に捉えるのではなく腸内細菌叢として集合的に捉え、その1つの生き物としての腸内細菌叢が「人食いバクテリア」になるということなのでしょうか。

腸内細菌が生産する酵素もマウスに与えた食事の内容に左右されており、食物繊維がときおり不足するだけの場合にも、不足するたびに腸粘膜を分解する酵素の生産量が増えていました。

腸粘膜の様子

マウスの腸粘膜を観察すると、食事中に含まれる食物繊維の量が少ないほど粘膜の層が薄くなっていました。 正常な腸であっても腸粘膜は常に生産と分解が行われていますが、食物繊維が欠乏しているときには、腸粘膜が生産されるペースが分解されるペースに追いついていませんでした。

大腸菌っぽい細菌が調子に乗る

シトロバクター・ローデンチウムと呼ばれるヒトにとっての大腸菌にあたる危険な細菌をマウスに感染させたところ、この細菌はマウスに食物繊維を含有しない食事を与えた場合に腸内にはびこり、はびこられたマウスは衰弱してしまいました。

そうして衰弱したマウスの腸粘膜は、随分と薄くなっていたり破れかけたりしていました。 炎症も広範囲に見られました。

食物繊維の摂取量が十分なマウスにシトロバクター・ローデンチウム菌を感染させた場合にも腸の炎症が見られましたが、その範囲は限定的でした。

アドバイス
研究者は次のように述べています:
「あまり加工がなされていない自然な食物繊維を様々な食品から摂りましょう。 食事は腸内細菌叢に直接的に影響します(エサです)。 そして、腸内細菌叢は腸粘膜の健康状態や病気への耐性に影響します」