炎症について
炎症は病原体や有害物質に対して免疫系が引き起こす自然免疫反応の一部で、傷の治癒を促進したり病原菌を抑制したりするのに役立ちます。
しかし、炎症は健全な組織まで傷つけてしまうので、感染症や怪我などが生じていないときにも炎症が持続する慢性的な炎症は体にとって有害です。 慢性的な炎症はガン・糖尿病・心臓疾患・リウマチ・抑鬱・アルツハイマー病など様々な病気の一因になると考えられています。
慢性炎症の原因となるのは、体内から排除されずに残っている病原体・有害物質・免疫系の異常・運動不足・肥満・遺伝的体質・加齢などですが、食事内容も慢性炎症に大きく影響します。
食生活の炎症度と健康
食生活の炎症度とは、普段の食事に含まれ炎症に影響する各種成分がトータルで炎症を促進するか、それとも抑制するかということです。 サウス・カロライナ大学の研究では、食生活の炎症度を判定するのに食事炎症指数(DII)という尺度が用いられます。
これまでの類似研究で、食生活の炎症度が高い人は大腸ガン・乳ガン・膀胱ガン・胃ガン・喉咽頭ガン・腎臓ガン・早死に・骨折・抑鬱・精神的苦悩のリスクが高いことが示されています。
研究の方法
致命的とはならなかった心臓発作に初めてなった患者760人(79才未満)と心臓発作以外の患者682人を対象に食生活に関するアンケート調査を実施しました。
そしてアンケート結果からDIIを割り出し、DIIスコアの高さに応じてデータを4つのグループに分けて心臓発作のリスクを比較しました。 データの分析においては、心臓発作のリスクに影響する様々な要因を考慮しました。
結果
DIIスコアが最も高かったグループは最も低かったグループに比べて、心臓発作のリスク(オッズ比)が60%高くなっていました。 DIIスコアが1ポイント(*)上がるたびに、心臓発作のリスクが9%ほど増加するという計算になります。類似研究
"Nutrition Journal"(2017年)に掲載されたスウェーデンの研究では、初めて心筋梗塞になった男女 1,389人と心筋梗塞にならなかった男女 5,555人のデータを分析して、男性はDIIスコアが高い場合に心筋梗塞のリスクが50%高いが、女性ではDIIスコアと心筋梗塞のリスクとの間に関係が見られないという結果になっています。
"atherosclerosis" 誌(2016年)に掲載されたオーストラリアの研究でも、50~55才の女性7千人ほどのデータを分析して、DIIスコアと心血管疾患(心臓病や脳卒中)のリスクとの間に関係が見られないという結果になっています。