抗酸化物質のサプリを飲んでいれば食生活が劣悪でも健康的に年を取れる?

(2018年3月) "Journal of Nutrition" に掲載されたパリ13大学などの研究によると、中年の頃に炎症を促進するタイプの食生活を送っていると年を取ってから健康を損ねやすくなりますが、炎症を促進する食生活のそうした悪影響を抗酸化物質のサプリメントで緩和できるかもしれません。

炎症について

炎症は病原体や有害物質に対して免疫系が引き起こす自然免疫反応の一部で、傷の治癒を促進したり病原菌を抑制したりするのに役立ちます。

しかし、炎症は健全な組織まで傷つけてしまうので、感染症や怪我などが生じていないときにも炎症が持続する慢性的な炎症は体にとって有害です。 慢性的な炎症はガン・糖尿病・心臓病・リウマチ・抑鬱・アルツハイマー病など様々な病気の一因になると考えられています。

慢性炎症の原因となるのは、体内から排除されずに残っている病原体・有害物質・免疫系の異常・運動不足・肥満・遺伝的体質・加齢などですが、食事内容も慢性炎症に大きく影響します。

食生活の炎症度と健康

食生活の炎症度とは、普段の食事に含まれ炎症に影響する各種成分がトータルで炎症を促進するか、それとも抑制するかということです。 サウス・カロライナ大学の研究では、食生活の炎症度を判定するのに食事炎症指数(DII)という尺度が用いられます。

これまでの研究では、DIIスコアが高い(炎症を促進するタイプの食生活を送っている)人は大腸ガン・乳ガン・膀胱ガン・胃ガン・喉咽頭ガン・腎臓ガン・前立腺ガン・動脈硬化・心血管疾患(心臓病や脳卒中)・心血管疾患による死亡・虚弱・肥満・骨折・抑鬱・精神的苦悩・歯牙喪失のリスクや総死亡リスクが高いことが示されています。

研究の方法

抗酸化物質のサプリメントの健康効果を調べる臨床試験の参加者の一部に、8年間ほどにわたる臨床試験が終わったのち何年間かにわたり引き続き観察研究に参加してもらいました。

臨床試験

フランスに住む男女1万3千人(女性は35~60才、男性は45~60才)を2つのグループに分けて、1994年~2002年にわたり一方のグループにのみ、次の内容の抗酸化物質のサプリメントを毎日服用してもらいました: ビタミンC 120mg、βカロチン 6mg、ビタミンE 30mg、セレン 100μg、亜鉛 20mg。

観察研究

観察研究に参加したのは、糖尿病・心臓病・脳卒中・ガンではない55才の男女 2,796人でした。 健康状態の評価は 2007~2009年にかけて行いました。 以下のすべてに該当する場合を「健康な老化」とみなしました:
  1. ガン・心臓病・脳卒中・糖尿病ではない。
  2. 身体機能と認知機能が良好である。
  3. 日常生活の遂行において介助を必要としない。
  4. 鬱症状を抱えていない。
  5. 対人関係が良好である。
  6. 「自分はおおむね健康である」と感じている。
  7. 活動の妨げとなるほどの慢性痛が生じていない。

DIIスコア

DIIスコアは、臨床試験の期間中および観察研究の期間中にアンケート調査を何度か行って得た食生活に関する情報に基づいて算出されました。

研究の方法のまとめ

上記をまとめると、8年間ほどにわたり抗酸化物質のサプリメントを飲んだり飲まなかったりしつつアンケート調査で食生活の内容を調べ、その後さらに何年間かにわたり健康状態を追跡調査して、中年の頃の食生活と年を取ってからの健康状態を調べたということになります。 臨床試験の期間と観察研究の期間の合計は平均13年間です。

結果

DIIスコアが最も高かった(食生活が炎症を促進しがちだった)グループは最も低かったグループに比べて、健康に老化できるケースが15%少ないという結果でした。

臨床試験において抗酸化物質のサプリメントを飲んでいたグループと飲んでいなかったグループに分けて分析すると、抗酸化物質のサプリメントを飲んでいなかったグループでのみ、DIIスコアが高いと健康に老化できるケースが少ない(-20%)という関係が見られました。

解説

慢性炎症と抗酸化物質

慢性炎症と酸化ストレスはいずれも老化を促進しますが、両者は相互に関係しています。 酸化ストレスにより炎症が生じたり、炎症により酸化ストレスが生じたりするからです。

抗酸化物質と酸化ストレス

酸化ストレスは活性酸素種の発生量が体内で作られる抗酸化物質の能力を上回ったときに生じます。 抗酸化物質は体内で作られる以外に、食事などにより体外から取り入れることもできます。 こうして体外から取り入れた抗酸化物質であっても酸化ストレスの軽減に効果があります。

抗酸化物質のサプリに劣悪な食生活をカバーする効果?

今回の研究は、抗酸化物質のサプリメントを飲んでいたグループではDIIスコアと健康的に老化する人の割合とのあいだに関係が見られないという結果でしたが、これはDIIスコアの高さ(食生活の劣悪さ)を抗酸化物質のサプリメントで少なくとも部分的にはカバーできるということなのかもしれません。

ただし研究チームは、抗酸化物質をサプリで摂るよりは野菜や果物などの食品で摂る(つまりDIIスコアが高い食生活を目指す)ことを推奨しています。

研究チームが参考文献として挙げている "Advances in Nutrition"(2013年)に掲載された論文によると、果物・野菜・全粒穀物などの自然食品に含有される多用な成分(ビタミンとミネラルだけでなくポリフェノールや食物繊維など)が相乗効果を発揮してサプリメント以上の健康効果を生み出すのだと考えられます。

ちなみに臨床試験の結果(2004年に JAMA Internationalに発表された)はというと、男性でのみ抗酸化物質のサプリメントを服用した場合に死亡リスク(死因は問わない)とガン(種類は問わない)になるリスクが下がるというものでした。 男性でのみリスクが下がっていた理由としては、男性はサプリメント服用開始前の時点で一部の抗酸化物質(特にベータカロチン)の摂取量や血中濃度が女性よりも低かったためではないかという仮説が考えられています。 つまり、不足している栄養素に関してのみサプリメントの効果があるということでしょうか。