炎症を抑える食生活で鬱症状が生じにくくなる?

(2018年4月) "Journal of Affective Disorders" に掲載されたパドヴァ大学(イタリア。イタリアで2番目に古い大学。 ガリレオ・ガリレイ、ダンテ、ペトラルカが教授を務めた)などによる研究で、炎症を促進するタイプの食生活を送っている人は抑鬱が生じやすいという結果になりました。

炎症について

炎症は病原体や有害物質に対して免疫系が引き起こす自然免疫反応の一部で、傷の治癒を促進したり病原菌を抑制したりするのに役立ちます。

しかし、炎症は健全な組織まで傷つけてしまうので、感染症や怪我などが生じていないときにも炎症が持続する慢性的な炎症は体にとって有害です。 慢性的な炎症はガン・糖尿病・心臓病・リウマチ・抑鬱・アルツハイマー病など様々な病気の一因になると考えられています。

慢性炎症の原因となるのは、体内から排除されずに残っている病原体・有害物質・免疫系の異常・運動不足・肥満・遺伝的体質・加齢などですが、食事内容も慢性炎症に大きく影響します。

食生活の炎症度と健康

食生活の炎症度とは、普段の食事に含まれ炎症に影響する各種成分がトータルで炎症を促進するか、それとも抑制するかということです。 サウス・カロライナ大学の研究では、食生活の炎症度を判定するのに食事炎症指数(DII)という尺度が用いられます。

これまでの研究では、DIIスコアが高い(炎症を促進するタイプの食生活を送っている)人は大腸ガン・乳ガン・膀胱ガン・胃ガン・喉咽頭ガン・腎臓ガン・前立腺ガン・動脈硬化・心血管疾患(心臓病や脳卒中)・心血管疾患による死亡・虚弱・肥満・骨折・抑鬱・精神的苦悩・歯牙喪失のリスクや総死亡リスクが高いことが示されています。

研究の方法

米国に住む平均年齢61才の男女 3,648人(女性 2,071人)を対象に、食生活に関するアンケート調査を実施してDIIスコアを割り出し、その後の8年間における鬱症状の発生状況を追跡調査しました。

結果

追跡期間中に、837人(女性527人)に鬱症状が生じました。

DIIスコアが最も高い(食生活の炎症度が最も高い)グループはDIIスコアが最低のグループに比べて、鬱症状が生じるリスクが24%増加していました。

炎症を促進する食生活により抑鬱のリスクが増加するのかもしれません。 研究チームは「炎症を促進しない食生活に切り替えることで抑鬱のリスクを減らせる可能性がある」と述べています。

関連研究

  • "British Journal of Nutrition"(2016年)に掲載されたオーストラリアの研究でも、平均年齢50才超の女性6千5百人ほどのデータを分析して、DIIスコアが高いと鬱病(CES-D10に基づく)のリスクが20%ほど高いという結果になっています。
  • Journal of Nutrition"(2017年)に掲載されたフランスの研究では、35~60才の男女 3,523人を平均12.6年間にわたり追跡調査したデータを分析して、喫煙歴(現在または過去)がある場合や運動不足の場合に限り、DIIスコアが高いと抑鬱のリスクが高いという結果になっています。 DIIスコアに応じてデータを4つのグループに分けてスコアが最高のグループと最低のグループを比較したところ、喫煙歴がある場合にはDIIスコアが最高のグループで121%のリスク増加、運動不足の場合にはDIIスコアが最高のグループで107%のリスク増加でした。
  • "Preventive Medicine" 誌(2017年)に掲載されたウィスコンシン大学マディソン校の研究では、米国に住む20才以上の男女1万1千人超のデータを分析して、DIIスコアが最も高かった(炎症を促進する食生活だった)グループは、スコアが最も低かったグループに比べて抑鬱のリスクが2.26倍精神的苦悩が頻繁に生じるリスクが1.81倍不安症とDIIスコアとの間には関係が見られないという結果になっています。
  • "Clinical Nutrion" 誌(2017年)に掲載されたユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(アイルランド)などの研究では、2千人超の男女(女性51%)を対象とするアンケート調査に基づいて、女性に限りDIIスコアが最も高いグループはスコアが最も低いグループに比べて、鬱症状のリスクが129%(2.29倍)高く、不安症のリスクが100%(2倍)高く、幸せであることが45%少ないという結果になっています。 男性ではDIIスコアと精神衛生とのあいだに統計学的に有意な関係が見られませんでした。
他にも次のような結果になった研究が存在します:
  1. フラボノイド(野菜・果物に含まれている)の摂取量が多いと鬱病のリスクが低い。
  2. ハンバーガーやピザなどのファーストフード(炎症を促進する)をよく食べる人は鬱病のリスクが高い。
  3. 食生活が不健全(炎症を促進する炭水化物や飽和脂肪などの摂取量が多く、ビタミン類・ミネラル類・フラボノイド類など炎症を軽減する栄養素の摂取量が少ない)な人は抑鬱の症状が生じやすい。