(2017年9月)"Journal of Post-acute and Long Term Care Medicine" に掲載されたサウス・カロライナ大学などの研究によると、炎症を抑える食生活が虚弱の予防に有益かもしれません。ただし今回の研究では、男性でのみ食生活の炎症度と虚弱リスクとのあいだに関係が見られました。
虚弱とは
虚弱とは、不本意な体重の減少・疲労感・活動量の低下・動作の鈍化・筋力低下などが見られる状態を指します。 虚弱な高齢者では入院や死亡のリスクが増加します。
炎症について
炎症は病原体や有害物質に対して免疫系が引き起こす自然免疫反応の一部で、傷の治癒を促進したり病原菌を抑制したりするのに役立ちます。
しかし、炎症は健全な組織まで傷つけてしまうので、感染症や怪我などが生じていないときにも炎症が持続する慢性的な炎症は体にとって有害です。 慢性的な炎症はガン・糖尿病・心臓病・リウマチ・抑鬱・アルツハイマー病など様々な病気の一因になると考えられています。
慢性炎症の原因となるのは、体内から排除されずに残っている病原体・有害物質・免疫系の異常・運動不足・肥満・遺伝的体質・加齢などですが、食事内容も慢性炎症に大きく影響します。
食生活の炎症度と健康
食生活の炎症度とは、普段の食事に含まれ炎症に影響する各種成分がトータルで炎症を促進するか、それとも抑制するかということです。 サウス・カロライナ大学の研究では、食生活の炎症度を判定するのに食事炎症指数(DII)という尺度が用いられます。
これまでの類似研究で、食生活の炎症度が高い人は大腸ガン・乳ガン・膀胱ガン・胃ガン・喉咽頭ガン・腎臓ガン・前立腺ガン・動脈硬化・心血管疾患(心臓病や脳卒中)・心血管疾患による死亡・早死に・肥満・骨折・抑鬱・精神的苦悩・歯牙喪失のリスクが高いことが示されています。
研究の方法
北米に住む男女4千人超(*)を対象に、食生活に関するアンケート調査を実施してDIIスコアを算出したのち、虚弱の発生状況を8年間にわたり追跡調査しました。
そして、DIIスコアに応じてデータを4つのグループに分け、グループ間で虚弱のリスクを比較しました。結果
追跡期間中に8%の人が虚弱になりました。
DIIスコアが最も高い(食生活が炎症を促進するタイプである)グループはDIIスコアが最も低いグループに比べて、虚弱のリスクが37%高くなっていました。
男女別に分析すると、男性においてのみDIIスコアと虚弱リスクとの関係が統計学的に有意となりました。