炎症について
炎症は病原体や有害物質に対して免疫系が引き起こす自然免疫反応の一部で、傷の治癒を促進したり病原菌を抑制したりするのに役立ちます。
しかし、炎症は健全な組織まで傷つけてしまうので、感染症や怪我などが生じていないときにも炎症が持続する慢性的な炎症は体にとって有害です。 慢性的な炎症はガン・糖尿病・心臓病・リウマチ・抑鬱・アルツハイマー病など様々な病気の一因になると考えられています。
慢性炎症の原因となるのは、体内から排除されずに残っている病原体・有害物質・免疫系の異常・運動不足・肥満・遺伝的体質・加齢などですが、食事内容も慢性炎症に大きく影響します。
食生活の炎症度と健康
食生活の炎症度とは、普段の食事に含まれ炎症に影響する各種成分がトータルで炎症を促進するか、それとも抑制するかということです。 サウス・カロライナ大学の研究では、食生活の炎症度を判定するのに食事炎症指数(DII)という尺度が用いられます。
これまでの研究では、DIIスコアが高い(炎症を促進するタイプの食生活を送っている)人は大腸ガン・乳ガン・膀胱ガン・胃ガン・喉咽頭ガン・腎臓ガン・前立腺ガン・動脈硬化・心血管疾患(心臓病や脳卒中)・心血管疾患による死亡・虚弱・肥満・骨折・抑鬱・精神的苦悩・歯牙喪失のリスクや総死亡リスクが高いことが示されています。
研究の方法
欧州の各地に住む男女47万6千人(30%が男性)を対象に、食生活に関するアンケート調査を実施してDIIスコアを割り出し、その後の14年間における胃ガンの発生状況を追跡調査しました。
結果
追跡期間中に913件の胃ガンが発生しました。
DIIスコアに応じてデータを4つのグループに分けて、スコアが最高の(食生活の炎症度が高い)グループと最低のグループとで胃ガンのリスクを比較すると、スコアが最高のグループは最低のグループに比べて、胃ガンのリスクが66%増加していました。
胃ガンを噴門部ガン(胃の上部に生じるガン)と非噴門部ガンとに分けて同様の比較を行うと、噴門部ガンに関してのみスコアが最高のグループで94%のリスク増加でした。 非噴門部ガンに関してはグループ間でリスクに差が見られませんでした。
DIIスコアが標準偏差の数値のぶん増えるごとに、胃ガン(全体)ではリスクが25%増加し、噴門部ガンに限るとリスクが30%増加するという計算になります。