DNAが修復されるメカニズムが一部解明

(2013年5月) "PNAS" 誌に掲載されたシェフィールド大学(英国)の研究で、DNAが修復されるメカニズムが一部解き明かされました。 この成果により、DNA塩基の損傷具合からガンになるリスクを判定できるようになります。

研究者は次のように述べています:

「タンパク質は人体の生存に必要な日々のプロセスの全てを担当しているため、DNA塩基が傷つくと、それに関係するタンパク質が機能しない、あるいは生産過多になり、ガンの原因となります」

「人体は毎日、アルキル化剤という化学物質に暴露されています。 アルキル化剤は、タバコの煙などの環境や、赤身の肉または加工肉などの食事から人体に取り込まれます。 そして、このアルキル化剤は、DNAの塩基を化学的に変化させるため、機能不全のタンパク質が生産されたり、ガンにかかる原因となります」

「人体は、DNAを修復する多数のタンパク質が何種類も備えており、これらのタンパク質が、DNA内の損傷した塩基を見つけ出しては修復してくれるのですが、DNA塩基の損傷というのは深刻な問題である割に発生件数が少ない(塩基数100万につき1つや2つ以下)ため、損傷した塩基を見つけ出すのが非常に困難なのです」

DNAは、アデニン、グアニン、シトシン、チミンという4種類の塩基の配列の内に生命にとって必要な情報のすべてを含んでいます。 これらの塩基の特定の配列こそが遺伝子なわけですが、この遺伝子によって、どのようなタンパク質が作られるかが指示されます。 また、遺伝子のスイッチのオンとオフを切り替えることによって、作られるタンパク質の量をコントロールできます。

今回の研究では、塩基の1つであるグアニンを損傷させて、06-アルキルグアニン(O6-alkylguanine)を作り出しました。 この損傷塩基は、結腸や膀胱のガンによく見られます。

「ヒトの場合、06-アルキルグアニンは、アルキルトランスフェラーゼというタンパク質により損傷と逆のプロセスが行われることで修復されてグアニンに戻りますが、アルキルトランスフェラーゼが、Alt1 というタンパク質中に存在するアルギニンというアミノ酸の正電荷を持つ側鎖によりDNA塩基全体の電荷の分布をチェックすることで、アルキル化により損傷し変化した塩基を見つけ出していることが、この研究で明らかになりました」

「アルキルトランスフェラーゼ以外のDNA修復タンパク質でも、損傷塩基を探知するメカニズムは同様だと思います。 今回の研究ではさらに、アルキルトランスフェラーゼ様のタンパク質である Alt1 が、 0-アルキルグアニンのうち既に知られているもの全ての損傷を探知できることも明らかになりました」

「ヒトの生体組織検査において、Alt1 を用いて 06-アルキルグアニンを特定し、その量を判定できるようになれば、ガン、特に結直腸ガンのリスクの判定に役立つことでしょう」