遺伝子検査キットの結果は食生活改善の参考にならない?

(2016年2月) 自分の体に最適の食生活を判断するための遺伝子検査キットというものが市販されていますが、ニューカッスル大学の研究によると、このような遺伝子検査キットに基づいて食生活を変更しても健康への効果は得られません。

研究者は次のように述べています:
「信頼性の高い遺伝子検査キットを実現するには、何億円ものコストと数年間という期間をかけて何百人もの人たちを被験者とする臨床試験を複数行うことが必要ですが、このようなコストは遺伝子検査ビジネスに携わる新興企業の大部分にとって手が届きません」
研究の方法
"Food4Me" と呼ばれる栄養遺伝子学的な臨床試験において、欧州に住む500人を次の3つのグループに分けて半年間を過ごしてもらいました:
栄養遺伝子学
食べた食品の体内での処理のされ方が遺伝子の違いによってどのように変わってくるかを調べる学問のことを、栄養遺伝子学(nutrigenomics)と言います。 脂肪や体重のコントロールには140以上の遺伝子座が関与していますが、食事の改善にDNAに関する情報を用いる技術は未だ実用的なレベルに達していません。
  1. 一般的に推奨される食事を続けるグループ
  2. パーソナライズ(後述)した食事を続けるグループ
  3. 遺伝子検査の結果を参考にした食事を続けるグループ
結果
1のグループよりも2のグループの方が健康的な食事でした(*)が、3のグループは遺伝子検査を受けなかったグループ(†)と違いがありませんでした。

(*) 具体的にどう健康的だったのかは不明です。 血液検査などの健康診断の結果が良好だったということでしょうか。

(†) おそらく、1と2のグループの両方ではなくて1のグループだけ。
結論

この結果に基づき研究者は、「既存のDNA検査は健康的な食生活を確立する役には立たない」と述べています。 この意見は、Academy of Nutrition and Dietetics の「遺伝栄養学的な検査は現時点では、食事内容を決定する際の参考にはならない」という主張とも合致します。

パーソナライズについて

「パーソナライズ」とは「カスタマイズ」と同じような意味で、「個々の人に適したものにする」あるいは「個別化する」という意味です。 したがって食事の「パーソナライズ」では、食事を自分の体に合うものへと最適化することを目指します。 上述の試験で具体的にどのようにパーソナライズしたのかは不明です。

ネットで調べたところ「パーソナライズ」と称される食生活改善法にも様々なものがあって、性別・年齢・BMI・運動量・好きな食べ物など自分で把握できる項目のみを考慮して食事内容を決定するものから、血液の状態や腸内細菌叢のように医療機関で検査する必要がある項目が要求されるものまであります。

この試験では「パーソナライズ」と「遺伝子検査」とで比較していますが、一般的には遺伝子検査の結果を参考にするのもパーソナライズの一部とみなされると思います。

随分と昔からカロリーやビタミン、ミネラルの推奨摂取量が年齢や性別などのグループごとに定められていますが、こういうグループ分けをさらに推し進めてをグループを細分化していったのがパーソナライズで、血液検査などの結果を用いるパーソナライズからさらに一歩進んだのが遺伝子検査の結果を参考にするパーソナライズということになるのでしょう。

遺伝子検査が有効であるとする研究
最適な食事内容の決定に遺伝子検査が有効であるとする研究も2つ存在し、遺伝子検査事業を行う企業に頻繁に引用されています。
  • 1つはトロント大学が 2014年に発表したもので、通常の減塩食よりも遺伝子検査の結果を参考にした食事の方が塩分摂取量が大きく減るという結果になっています。
  • もう1つは同じく 2014年に Burlo Garofolo Hospital(イタリア)の研究チームが191人の肥満者を被験者として行ったもので、カロリー計算に基づき用意された標準的な食事に比べて、遺伝子検査の結果を参考にした食事の方が33%も減量効果が大きいという結果になっています。
ただしこれらの研究では、食生活改善の効果が食事のパーソナライズによるものなのか、それとも純粋に遺伝子的検査の結果を参考にしたことによるものなのかは不明です。
これらの研究ではパーソナライズの一環として遺伝子的検査の結果を参考にしたということでしょう。 上述の "Food4Me" の試験で言えば、1を続けるグループと2と3を併せたものを続けるグループとで比較したということでしょう。
Burlo Garofolo Hospital の研究者も次のように述べています:
「遺伝子検査は、パーソナライズによる包括的な食事プログラムの一部として用いる場合に限り有効かもしれません。 遺伝子検査の結果を参考とするだけの食事は占星術と変わりません」