閲覧以外で当サイトのコンテンツを利用する場合には必ず引用・転載・ネタ探しをするときのルールに目を通してください。

消臭スプレーなどに使われている化学物質が胎児の知能に悪影響?

(2014年12月) "PLoS ONE" に掲載されたコロンビア大学の研究で、胎児のときにフタル酸ジ-n-ブチル(DnBP)やフタル酸ジイソブチル(DiBP)に暴露した量が多い子供は、暴露量が少なかった子供に比べてIQ(知能指数)が低い傾向にあるという結果になりました。

DnBP と DiBP
DnBP と DiBPは、制汗剤や消臭スプレー、ヘアスプレー、ネイル・ポリッシュ、ドライヤーシート(乾燥機で使う柔軟剤)、塩化ビニール、セルロイド、一部の石鹸などに用いられています。 米国では、フタル酸類が原料として製品に記載されることは滅多にありません。
研究の方法

この研究では、ニューヨーク市の低所得地域に住む328組の母子を追跡調査しました。 調査対象となったフタル酸エステルは次の4種類です: ①DnBP、②DiBP、③フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、④フタル酸ジエチル(DEP)。

結果

この4種類のフタル酸エステルについて妊娠27週目以降の暴露量(尿中のフタル酸代謝物の量)を測定し、子供が7才のときにIQテストを行ったところ、DnBP と DiBP の暴露量において上位1/4のグループに属する母親から生まれた子供は、下位1/4のグループに属する母親から生まれた子供に比べて、IQのグループ平均が DnBP では6.6ポイント、DiBP では7.6ポイント低くなっていました。

IQの個別的な項目である知覚的思考(perceptual reasoning)や、ワーキング・メモリー、処理速度などでも、DnBP と DiBP への暴露量とのあいだに相関関係が見られました。

この結果は、家庭環境や母親の教育水準など子供のIQに影響することが知られている要因を考慮したうえでのものです。 DnBP と DiBP 以外の2つのフタル酸エステルについては IQ とのあいだの関係は見られませんでした。

DnBP と DiBP の暴露量は、上位1/4のグループであっても世間一般に比べて特に多いわけではありませんでした。 研究者によると、米国では妊婦がほぼ毎日のようにフタル酸類に暴露しています。

コメント
研究者は次のように述べています:
「今回示されたIQの低下は懸念すべきレベルです。 IQが6~7ポイント違うと、学業や仕事に実質的な影響が生じます。」
別の研究者は次のように述べています:
「子供向けの玩具についてはフタル酸類の規制がいくらか行われていますが、妊婦をフタル酸への暴露から守るための規制は一切行われていません。 脳の発達の過程において胎児の時期がもっともデリケートであると思われるのに、フタル酸類が含有されていることを製品に表示することすら義務付けられていないのです」
アドバイス

フタル酸類を完全に避けることは困難ですが、フタル酸類への暴露を最低限に抑えるために出来ることとして研究チームは以下を挙げています:

  • 電子レンジで食品を加熱するときにプラスチック製の容器を使わない。
  • 消臭剤・芳香剤やドライヤー・シートなど香料の使われた製品を避ける。
  • リサイクルマークが「3(ポリ塩化ビニール)」、「6(ポリスチレン)」、「7(その他)」となっているプラスチック製品を使用しない。
補足

この研究チームは、過去の研究において胎児のときの DnBP と DiBP への暴露が3才の時点における挙動や認知・運動能力の発達に影響する可能性を示したほか、今年の9月には妊娠中のフタル酸類への暴露によって生まれる子供で喘息のリスクが増加する可能性があることを報告しています。参考記事: 胎児のときに BBzP や DnBP に暴露すると生後の喘息リスクが増加

フタル酸類がどのように子供の健康に影響するのかは不明ですが、フタル酸類がテストステロンや甲状腺ホルモンを撹乱することは複数の研究で示されています。 炎症や酸化ストレスも関与しているかもしれません。