運動によって抗がん剤ドキソルビシンの効果が増幅されるかも

(2014年9月) "American Journal of Physiology" に掲載されたペンシルバニア大学の研究によると、ドキソルビシン(アドリアマイシン)という抗がん剤の効果を運動によって増強できるかもしれません。 この研究は、皮膚がんの一種であるメラノーマを発病させたマウスを用いて行われました。

研究の背景

ドキソルビシンには心臓の細胞にダメージを与えるという副作用があり、そのために心不全の長期的なリスクが増加してしまいますが、過去の複数の研究で、化学療法を受ける前に運動をしておくことでドキソルビシンの心臓への有害性を低減できる可能性が示されています。

そこで今回の研究で、化学療法を受けている最中に運動をした場合の(副作用低減の)効果を調査したところ、副作用は低減されなかったのですが、ドキソルビシンの効果が増大していたのです。

研究の方法

メラノーマ細胞を首筋に注射したマウスを2つのグループに分けて、一方のグループにはドキソルビシンを2週間のあいだに2回注射し、もう一方のグループにはプラシーボを注射しました。

そして、両グループをさらにそれぞれ2つのグループに分けたうちの一方(つまり4つに分けたグループのうちの2つ)にのみ、マウス用のトレッドミル(ルームランナー)で運動をさせました。

結果

2週間後にマウスの心臓を超音波検査と組織分析で調べたところ、ドキソルビシンの副作用により、心臓に機能低下、サイズの縮小、および繊維化が生じていました。 運動をしていたグループでも、これらの副作用は同じように生じていました。

ところが、ドキソルビシンを投与されたうえで運動をしていたグループでは、ドキソルビシンを投与されただけのグループに比べて、腫瘍のサイズが有意に小さくなっていました。

解説

運動によってドキソルビシンの効果が増幅されるメカニズムは今後調べる必要がありますが、研究チームは、運動によって腫瘍への血流が増加するために腫瘍にまで届く薬の量が増えるのだろうと考えています。

ヒトでもマウスと同様に運動によってドキソルビシンの効果を増幅できるのであれば、ドキソルビシンの投与量を減らして副作用を減らすことも可能になると思われます。