漢方薬 『独活寄生湯』 の膝関節炎に対する効果は明確ではない

(2016年1月) 独活寄生湯という漢方薬は関節痛の治療にも用いられますが、"*BMJ Open*" に掲載された福建中医薬大学(中国)などのシステマティック・レビューによると独活寄生湯の膝関節炎(変形性膝関節症)に対する効果は明確ではありません。
Wenming Zhang, Shangquan Wang, Ranxing Zhang, Yuanyuan Zhang, Xinjian Li, Yanping Lin, Xu Wei. Evidence of Chinese herbal medicine Duhuo Jisheng decoction for knee osteoarthritis: a systematic review of randomised clinical trials. BMJ Open 2016;6:e008973 doi:10.1136/bmjopen-2015-008973 (Licensed under CC BY 4.0)
独活寄生湯

独活寄生湯はウド(独活)・ジンギョウ・ボウフウ・サイシン・ケイヒなど15種類の生薬を用いて作られる漢方薬です。 淤血(血液の停滞)の除去・肝臓や腎臓の滋養・気血の賦活化に良いとされ、古来より関節痛の治療に用いられていきました。

近年の研究では、独活寄生湯に軟骨細胞の増殖を促進する作用やニトロフェリシアン化ナトリウムによる軟骨細胞の死滅を阻害したりする作用などがある可能性が示されています。

レビューの方法

独活寄生湯を単体で用いた場合または独活寄生湯を他の治療法と組み合わせた場合の膝関節炎に対する効果を調べた12の研究のデータ(被験者数は合計で982人)を分析しました。

結果
Lysholm Knee Scoring Scale を尺度とする研究

以下は、症状の程度の評価にLysholm Knee Scoring Scaleという尺度を用いた3つの研究の結果です。 各研究の内容の違いが大きいためメタ分析は行われませんでした。

  1. 独活寄生湯とメロキシカムとで効果を比較した研究で、独活寄生湯を服用したときの方が服用開始から2~4週間目の時点で症状の改善幅が大きいという結果になった。
  2. 膝関節炎の手術およびリハビリだけを行う場合に比べて、独活寄生湯を併用した場合の方が4週間目に達した時点での症状の改善が顕著であるという結果になった。
  3. ヒアルロン酸ナトリウム注射だけの場合に比べて、独活寄生湯を併用した場合の方が12週間後の時点での治療効果が高かった。
Lequesne Index を尺度とする研究

Lequesne Index という尺度を用いた研究に、グルコサミンに比べて独活寄生湯を服用したときの方が服用開始から4週間目の時点で関節炎の症状が大きく改善されるという結果になったものが1つあります。

Lequesne Index を尺度とする研究がもう1つありましたが、こちらの研究ではジクロフェナックと独活寄生湯とで4週間目における効果に差がないという結果でした。

VACを尺度とする研究

以下は、症状の程度の評価にVAC(Visual Analogue Scale)という尺度を用いた研究の結果です。

独活寄生湯とジクロフェナック(解熱鎮痛剤)との比較では4週間目以降は効果に差が無いという結果でしたが、独活寄生湯とメロキシカムとの比較では4週間目以降に独活寄生湯の方が効果的であるという結果でした。

独活寄生湯+ヒアルロン酸ナトリウム注射(85人)とヒアルロン酸ナトリウム注射のみ(85人)とを比較した2つの研究では、独活寄生湯+ヒアルロン酸ナトリウム注射の方が効果的だという結果でした。

独活寄生湯+ジアセレイン(関節炎治療薬。IL-1を阻害する)とジアセレインのみとを比較した1つの研究では、12週間後の時点で独活寄生湯+ジアセレインの方が効果的だという結果でした。

WOMACを尺度とする研究

独活寄生湯+グルコサミン(99人)とグルコサミン単体(100人)との比較でも、独活寄生湯+メロキシカム(解熱鎮痛剤)+グルコサミン(50人)とメロキシカム+グルコサミン(50人)の比較でも、独活寄生湯を併用したときの方が膝関節炎の症状が軽減されていました。

症状軽減の程度はWOMAC(*)という尺度において、前者では3つの研究の平均で4.2点、後者では2つの試験の平均で3.48点でした。
(*) WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Arthritis Index)では、膝の痛み・歩行などの動作の困難さ・膝の強張りなど24の項目について0~4点の5段階で評価します。 したがって、点数の幅は0~96点ということになります。
結論
独活寄生湯とオーソドックスな治療法との併用が膝関節炎の治療に有効であるように見受けられます。 しかしながらデータが質量ともに不足しているため、膝関節炎に対する独活寄生湯の効果と安全性については未だ明確ではないと言わざるを得ません。