「最新健康ニュース」のコンテンツを閲覧以外で利用する方は「引用・転載・ネタ探しをするときのルール」をご覧ください。

ガン細胞の死滅がT細胞の働きを妨げる

(2016年9月) "Nature" 誌に掲載された Babraham Institute(英国)などの研究により、腫瘍組織が死滅する際に放出されるカリウムによって抗腫瘍効果を有する免疫細胞の一種であるT細胞の働きがストップしてしまうことが明らかになりました。

これまでの研究により、抗腫瘍作用を持つ免疫細胞の働きを腫瘍が抑制することは知られていましたが、そのメカニズムは不明でした。

研究の概要

今回の研究では、腫瘍(*)内の細胞が死滅する際にカリウムを細胞外間隙(細胞と細胞のあいだの隙間。組織液で満たされている)に放出することがわかりました。

カリウムの濃度は通常、細胞内では高いのですが細胞外では高くありません。 腫瘍内の細胞外間隙においてカリウムの濃度が高くなると、T細胞の活性が鈍って腫瘍に対抗する機能が働かなくなってしまいます。
(*) 腫瘍は、活発に増殖する細胞と死滅した組織で構成されています。
T細胞を改造してみた
皮膚ガンのマウスにおいて、腫瘍特異的T細胞を分子的に改造(*)してカリウムをT細胞それ自体の内部から除去する能力を増強したところ、T細胞を取り巻く環境のカリウム濃度が上昇しても抗腫瘍免疫応答を促す機能が失われませんでした。 そしてその結果、マウスにおいて除去される腫瘍の量が増えて、生存率がアップしました。
(*) カリウムを細胞外へと排出する分子ポンプを増やした。
コメント
研究者は次のように述べています:

「T細胞が体内に侵入してきた病原菌やガン細胞に出くわしたときに、カルシウムなどのイオン類がT細胞の活性化に重要な役割を果たすことが知られていますが、細胞外間隙に存在するカリウムがT細胞の活性化にどう影響するかは不明でした」

「今回の研究では、腫瘍細胞の死滅によるカリウム濃度の上昇が、①カルシウムの濃度にはほぼ影響しないこと、そして②T細胞が腫瘍に出くわしたときにPI3Kと呼ばれる細胞シグナル伝達経路が活性化するのを遮断することが判明しました」