妊娠中に「お腹の赤ちゃんの分まで食べる」必要はない?

(2015年9月) "The Australian and New Zealand Journal of Obstetrics and Gynaecology" に掲載されたニュー・サウスウェールズ大学(オーストラリア)の研究によると、妊娠すると食事からカロリーを取り出す能力と、摂取したエネルギーを保存する能力が向上します。 したがって、妊娠中に胎児の分まで食事をする必要はないかもしれません。

研究の方法

26人の妊婦を対象に、妊娠中の食事量・体重増加・エネルギー消費量を調査しました。 エネルギー消費量の調査には携帯型の計器を用いました。

結果

妊娠によりエネルギー要求が8%ほど増加し食事量もほとんど増えていないにも関わらず、体重が平均で10.8kg増えていました。 増加した体重のうち7kgが脂肪で、その大部分は妊娠1~26週目の間に増加していました。

この結果から、妊婦では食事からカロリーを取り出す能力とエネルギーを脂肪として蓄える能力が向上するのだと思われます。

結論

「妊娠中にはカロリー摂取量を徐々に増やすのがよい」という従来のアドバイスは適切ではないかもしれません。 これまでに行われた複数の小規模コホート研究でも今回と同様の結果になっています。

研究者は次のように述べています:
「妊婦向けの既存の栄養ガイドを見直す必要があるかもしれません。 妊娠中に摂取カロリーを増やすと体重が増えすぎるおそれがありますから」
解説
妊娠と脂肪

妊娠中には胎児の成長に伴ってエネルギーの必要量が変化しますが、この変化に余裕をもって対応するため母体には脂肪が不可欠です。 出産後の授乳期間中(特に最初の6週間)にも母親のエネルギー必要量は増加します。

その一方で、妊娠中に体重が過度に増えると妊娠糖尿病妊娠高血圧腎症などの合併症のリスクが増加するほか、生まれる子供が心臓疾患になるリスクも増加します。

仮説

妊娠中にエネルギーの摂取・貯蔵効率が向上する理由としていくつかの仮説が考えられていますが、研究者が注目しているのは「妊娠中には腸内細菌叢に変化が生じる」という仮説です。

この仮説によれば、妊娠によって腸内細菌叢に変化が生じ、それによって食事からカロリーを取り出す効率が向上し、そのために食事量が増えなくても貯蔵される脂肪の量が増加します。

腸内細菌叢の変化の他にも、レプチン(満腹感のホルモン)やインスリン抵抗性などにおける様々な変化が関与していると考えられています。