エボラ・ウイルスが空気感染?

(2012年11月) つい先日もウガンダでエボラ出血熱による死者が出ましたが、カナダ公衆衛生局の研究グループが行った実験によると、エボラ・ウイルスが豚から猿に飛沫感染した可能性があります。

エボラ・ウイルス

エボラ・ウイルスは、ヒトを始めとする多くの霊長類に感染する致死的な出血熱です。 エボラ出血熱はこれまで、チンパンジーや、ゴリラ、森林アンテロープなどの血液、分泌物、臓器、その他体液などに接触することでヒトに感染すると考えられてきました。

エボラ出血熱の治療法は確立されておらず、痛み止めなどの対症療法や、マラリアなど他の病気を防ぐための抗生物質の投与などが行われるだけです。

死亡率

エボラ・ウイルスは、種類によっては死亡率が90%にもなります。 2000年にウガンダで発生したエボラの流行では425人が感染し半数以上が死亡しました。

宿主

エボラ・ウイルスの宿主としては、これまでオオコウモリだけが疑われていましたが、複数のエビデンスから最近では、野生または家畜の豚がエボラ・ザイール(エボラ・ウイルスの中でも最も致死的なタイプ)の宿主ではないかと考えられるようになりました。 人間のあいだでエボラが流行する前には必ず豚が死んでいるという噂もあるそうです。

今回の研究

今回の研究では、エボラ・ウイルスが体液などの直接的な接触によらずに豚からマカク(ニホンザルと同種の猿)に感染する可能性が示されました。

実験の概要

実験では、エボラ・ウイルスを保有する豚を猿と同じ檻に閉じ込めました。 ただし、豚の居住エリアと猿の居住エリアは鉄線の柵で仕切っておきました。

8日後、猿たちの一部にエボラ出血熱の症状を示すものが出てきました。 エボラにかかった猿は安楽死させられました。

解説

この実験結果から、豚の気道から空気中にばら撒かれた飛沫で、猿たちがエボラに感染したという可能性が考えられます。

フィリピンの養豚家で、豚の屠殺・解体に関与していない人からエボラ・レストンと呼ばれる種類のエボラ・ウイルスに対する抗体が見つかったという報告がありますが、今回の研究結果はこの報告とも合致します。

すでに空気感染は始まっている?
研究グループは、アフリカの一部の地域ではすでに、エボラ・ウイルスが限定的な空気感染(limited airborne transmission)で広がっているのではないかと考えています。
2014年8月に "Science" 誌に掲載された研究によると、エボラ・ウイルスの変異速度は、この手のウイルスにしては速いほうで、すでに300回以上の変異を繰り返しており、2014年のアウトブレイク(大流行)の開始当初から遺伝子コードの50ヶ所ほどにおいて変化しています。 これらの変化がもたらす影響は不明です。
ただし研究者によると、エボラが飛沫感染するにしても感染に必要となる飛沫は大きいはずなので遠くまでは飛ぶことはなく、したがってインフルエンザのように世界中に流行することはありません。