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高齢者はLDLコレステロール値が高いほうが長生き

(2016年6月) スェーデンや日本などの研究チームが行い "*BMJ Open*" に掲載された研究(システマティック・レビュー)で、高齢者はLDL(悪玉)コレステロール値が高くても低くても寿命に影響しないどころか、LDLコレステロール値が高い方がむしろ長生きであるという結果になりました。出典: Lack of an association or an inverse association between low-density-lipoprotein cholesterol and mortality in the elderly: a systematic review
総コレステロール値が高いと心血管疾患(心臓発作や脳卒中)のリスクが高いという関係が年を取るにつれて相当に弱まっていくことは数十年前から知られていました。
レビューの方法

60才以上の中高年者を対象にLDLコレステロール値と総死亡率(死因を問わない死亡率)および/または心血管死亡率との関係を調べた19のコホート研究のデータを分析しました。 19の研究に含まれるコホート(調査対象となる集団)の数は30で、これらのコホートに含まれる人数は合計6万8千人ほどでした。

総死亡率を調べたコホートの数は28で、心血管死亡率を調べたコホートの数は9でした。
28と9を足して30を超えるのは、総死亡率と心血管死亡率の両方を調べたコホートがあるためでしょう。
結果
総死亡率
28のコホートのうち16のコホート(*)で、LDLコレステロール値が高いと総死亡率が低いという関係が認められました(†)。 残りの12のコホートでも、LDLコレステロール値と総死亡率との間に関係は見られませんでした(‡)

(*) コホートの数から言えば総死亡リスクを調査した28のコホートの半数にも満たない16ですが、データに含まれる人数は、この28のコホートのデータの92%を占めます。 つまり、他の12のコホートが小規模で人数が少なかった。

(†) ただし、LDLコレステロール値の高さと総死亡率の低さとの関係が統計学的に有意だったのは16のコホートのうち14でした。

(‡) つまり世間的なイメージと違って、LDLコレステロール値が高いと総死亡率が高いというわけではなかった。
心血管死亡率
心血管死亡率を調べた9つのコホートでは、2つのコホートにおいてLDLコレステロール値が最も低いグループ(*)で心血管死亡率が最も高いという関係が見られました。 残りの7つのコホートでは、LDLコレステロール値と心血管死亡率との間の関係は見当たりませんでした。
(*) データ全体をLDLコレステロール値に応じて4つに分けた中で、コレステロール値が最も低かったグループ。
解説

全般的に、高齢者ではLDLコレステロールが高いと死亡率が高いどころか低い(長生きである)という関係が多く見られました。 高齢者はコレステロール値が高いくらいのほうが健康的なのかもしれません。

コレステロール値が高い高齢者のほうがパーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患を発症することが少ないというデータが存在するほか、LDLコレステロール値が高いとガンや感染症などのリスクが低い(あるいはLDL値が低いとこれらの病気にかかりやすい)ことがあるとする研究も存在します。

コメント
研究者は次のように述べています:
「今回の結果は、今後解決すべきいくつかの疑問を呈しています。 例えば次のような疑問です: 若い人や中年の人は総コレステロール値が高いと心血管疾患のリスクが増加するのに、どうして高齢者はそうではないのか? LDLコレステロール値が高い高齢者に長生きの人が多いのは何故なのか?」
別の研究者は次のように述べています:
「今回の結果は 『コレステロール仮説』 と矛盾します。 コレステロール仮説とは次のようなものです:
『心血管疾患は中年期にLDLコレステロール値が高いために生じ、年を取るにつれて悪化して、最終的に心血管疾患による死亡を引き起こす』
しかし今回のレビューでは、このようなことはありませんでした。 年を重ねるごとにLDLコレステロールが動脈に蓄積して心臓病を引き起こすというのならば、LDLコレステロール値が高い高齢者のほうが長生きだというのはどういうことなんでしょうか? 60才以上の人はLDLコレステロール値が高いほうが長生きなのにコレステロール値を下げる必要はあるのでしょうか?」
今回の結果に基づき研究チームは、スタチンなどのコレステロール低下薬の必要性について再検討することを呼びかけています。