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乳化剤で大腸ガンのリスクが増加? そこに介在するのは腸内細菌

(2016年11月) "Cancer Research" 誌に掲載されたジョージア州立大学の研究によると、乳化剤が大腸ガンを促進する恐れがあります。 マウスに乳化剤を一定期間摂取させたところ、腸内細菌に異変が生じて腸の慢性炎症と大腸ガンの発生が促されたのです。

言葉の説明

乳化剤

乳化剤は消費期限を伸ばしたり食感を改善するために使われる食品添加物で、ほとんどの加工食品に使用されています。 乳化剤は界面活性剤(洗剤)と同じような性質を持ち、腸内細菌にも影響します。 ジョージア州立大学の以前の研究では、乳化剤の摂取によって腸の慢性炎症が促進されることが示されています。参考記事: 乳化剤が原因で腸内細菌に異変が生じて炎症とIBDとメタボの引き金に

慢性炎症

慢性炎症とは軽度の炎症が長期間にわたり継続するという状態のことです。 慢性的な炎症はガン・糖尿病・心臓疾患・リウマチ・抑鬱・アルツハイマー病などの様々な病気や老化の一因になると考えられています。 腸の慢性炎症には腸内細菌が関与している可能性があります。

腸内細菌と大腸ガン

大腸ガン患者では、腸内細菌の種類構成に異常が生じて腫瘍が発生しやすくなることが知られています。 腸内細菌の状態も大腸ガンのリスクも、食生活に大きく影響されます。

研究の方法

加工食品に使用されることが最も多い2種類の乳化剤(*)をマウスに食べさせるという実験を行いました。 食べさせた乳化剤の量は、この2種類の乳化剤を含む各種の乳化剤の総摂取量(†)に相当する程度でした。

(*) ポリソルベート80とカルボキシメチルセルロース。

(†) おそらく「(マウスではなく)ヒトが普段の生活で摂取している乳化剤トータルの量」という意味。

結果

乳化剤の摂取によって腸内細菌の種類構成に劇的な変化が生じていました。 この変化というのは炎症を促進する性質のもの(*)で、したがってガンの発生と発達を助長するタイプのものでした。
(*) 腸内細菌が作り出すフラジェリン(細菌の鞭毛を構成するタンパク質)とリポ多糖の量が増えた。 これらの物質は、免疫系に働きかけて炎症促進性の遺伝子の発現を活性化させます(炎症を促進するということでしょう)。

そして、乳化剤を摂取させるだけでマウスに結腸腫瘍が生じるリスクが増加しました。 乳化剤によって、(腸内の)環境が炎症を促進するタイプのものへと変化し、それによって細胞の増殖と死滅(アポトーシス)とのバランスが崩れたのだと思われます。

主役(悪役)は腸内細菌

腸内細菌を持たない無菌マウスでは、乳化剤の摂取が大腸ガンのリスクに及ぼす影響は失われていました。

そして、乳化剤を摂取した普通の(腸内細菌を持っている)マウスの腸内細菌を(乳化剤を摂取させていない)無菌マウスに移植すると、それだけで腸の上皮細胞の恒常性(*)に異変が生じました。
(*) おそらく、前出の「細胞の増殖と死滅のバランス」を指す。
このことから、乳化剤による大腸ガン助長において腸内細菌が中心的な役割を果たしていると考えられます。