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交通騒音で腹部の脂肪が増える?

(2015年5月) "Occupational & Environmental Medicine" 誌オンライン版に掲載されたスェーデンの研究で、自動車・バイク、電車、航空機などによる交通騒音がひどい地域に住んでいる人は腹部に脂肪が付きやすいという結果になりました。 腹部脂肪は様々な場所に付く脂肪のなかでも最も有害であることが知られています。

研究の方法

この研究では、スェーデンのストックホルム郊外に住む43~66才男女 5,075人を対象に、生活習慣・健康状態・不眠症やストレスの有無に関するアンケート、自動車・バイク・電車・飛行機に由来する環境騒音のレベルに関して聞き取り調査、および健康診断を実施しました。

健康診断の内容は、血圧測定、糖尿病検査、ウェスト:ヒップ比の測定、BMIの測定などでした。

そして、地方自治体や空港から入手したデータを用いて、各人がさらされた自動車・バイク、電車、飛行機による騒音のレベルを推算しました。 推算の際には、交通量だけでなく建物の地面からの高さや、路面の状態、制限速度、防音壁の有無などの要因も考慮しました。

結果
騒音への暴露状況

研究チームの推算によると、およそ45デシベル以上の交通騒音に日常的に曝(さら)されていた人の割合は、道路騒音(自動車やバイク)では62%にあたる 3,127人、電車騒音では20人に1人、航空機騒音では 1,108人でした。

45デシベル以上の交通騒音の源が1つだけだという人は54%(2,726人)、2つだという人は15%(740人)、3つ全部(道路・電車・航空機)だという人は2%(90人)でした。 これらのうち曝されている交通騒音のレベルが、健康にとって有害ではないとされる45デシベル未満だったのは約30%(1,519人)でした。

腹部脂肪と騒音の関係

騒音レベルは、BMIとの間に相関関係は見られませんでしたが、ウェストのサイズ(腹部脂肪)との間には関係が見られました。 騒音レベルが5デシベル増えるごとにウェストのサイズが0.21cm増えていたのです。 ただし、この関係が統計学的に有意なのは女性だけでした。

ウェストとヒップの比率も騒音レベルが上がるほどに悪化しており、騒音レベルが5デシベル増えるごとにウェスト:ヒップ比が0.16ずつ変化(*)していました。 こちらの関係は女性よりも男性に強く現れていました。
(*) ウェスト:ヒップ比は「ウェスト÷ヒップ」ですから、ヒップに対するウェストのサイズが大きくなるほどに数字が大きくなってゆきます。 したがって、この「変化」というのは「増加」ということでしょう。 0.16の増加は、例えばウェストが63cm、ヒップが90cmという人であれば、ウェスト・サイズが14cm大きくなるのに相当します(その筈です)。
騒音源による違い

ウェストのサイズについては①自動車・バイク、②電車、③航空機という3つの騒音源のいずれでも、が有意に増加していましたが、増加が最も目立ったのは航空機の騒音でした。 逆にウェスト:ヒップ比については、自動車・バイクと電車の騒音でのみ増加していました。

騒音源が複数の場合には、騒音によりウェスト・サイズが大きくなるリスクが累積的に増加していました。 騒音源が1つだけの場合にはウェスト・サイズが大きくなるリスクの増加が25%に過ぎなかったのに対して、騒音源が3つの場合このリスクは100%増加(2倍に増加)していたのです。

影響する要因

騒音とウェスト・サイズの関係に社会・経済的状態(収入・職業・学歴など)、生活習慣、交通由来の大気汚染による影響は見られませんでした。 しかし年齢による影響は見られ、60才超のグループでは騒音によってウェスト・サイズ増加のリスクは増加していませんでした。

考えられる理由

騒音によるストレスでコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンの分泌量が増加している可能性があります。 コルチゾールは腹部脂肪に関与していると考えられており、今回の研究で騒音によってBMIは増えないのに腹部脂肪だけが増える(腹部に脂肪が偏る)結果となったのと合致します。

他には、騒音により睡眠を妨げられるのが原因で代謝や心血管の機能に悪影響が生じ、そのために食欲のコントロールやエネルギー消費に異変が生じているという可能性も考えられます。

研究の弱点
今回の研究は観察研究であるために、騒音と腹部脂肪とのあいだに因果関係が存在することを証明するものではありません。 また、この研究では家屋の防音能力や家屋内における寝室の位置を考慮していません。