脳に重傷 ⇒ MTF1と結合する亜鉛イオンが増加 ⇒ てんかん発作

(2015年10月) "Nature Communications" 誌に掲載されたボン大学などの研究により、癲癇(てんかん)の発症に関わるシグナル伝達経路が解明されました。

癲癇発作
およそ20人に1人が一生のうちに一度は癲癇発作を起こします。 癲癇発作は、神経細胞が通常の活動リズムから外れて非常に速いテンポで発火するために生じます。 癲癇発作が起こるのが最も多いのは側頭葉ですが、側頭葉癲癇の患者の約1/3には薬物治療が効きません。
発見の内容
この研究ではマウス実験により、 脳に重度の損傷が一時的に生じた後に亜鉛イオンの数が増加すると、MTF1(metal-regulatory transcription factor 1)と呼ばれるスイッチとドッキングする亜鉛イオンの数が増えること、そしてそれによって神経細胞に存在する特殊なカルシウムイオン・チャネルが増加して癲癇発作が起こりやすくなることが明らかになりました。
癲癇は、怪我や炎症などで頭部に一時的な損傷が生じた後に間をおいて起こるケースが少なくありません。 脳内でのシグナル伝達にはイオン・チャネルが関与しています。 イオン・チャネルが門番としてカルシウム・イオンの神経細胞への進入を調節します。

そして遺伝子改造によりマウスのMTF1を阻害するという実験を行ったところ、癲癇の頻度と重症度が随分と緩和されました。

研究者は次のように述べています:
「脳に一過性の重傷を負ってから最初の転換発作が起こるまでのうちに、海馬(側頭葉に存在する)における遊離亜鉛イオンの濃度が増加することは随分前から知られていましたが、その現象が意味するところはこれまで不明でした」
実用性
亜鉛イオンまたはMTF1を特定的に阻害すれば、副作用をほとんど生じることもなく癲癇(側頭葉癲癇を含む)の発症を予防できるかもしれません。