女性ホルモンにインフルエンザ・ウイルスの増殖を抑える効果

(2016年1月) "Lung Cellular and Molecular Physiology" 誌に掲載されたジョンズ・ホプキンス大学の研究によると、女性ホルモンの一種であるエストロゲンがA型インフルエンザの増殖に対抗する効果を発揮するかもしれません。 ただし、この効果が期待できるのは女性だけです。出典: Not the Weaker Sex: Estrogen Protects Women Against the Flu, Study Finds

エストロゲンはこれまでに、HIV、エボラ・ウイルス、肝炎ウイルスに対して抗ウイルス作用を発揮することが示されています。

研究の方法
男性と女性から採取した鼻粘膜の細胞(インフルエンザ・ウイルスの主な感染場所)を用いて、エストロゲンがインフルエンザ・ウイルスの増殖能力に及ぼす影響を調べました。
ウイルスの増殖
ウイルスは細胞に侵入したのち細胞内部で自分の複製を作ることにより感染症を引き起こします。 感染症の重症度や感染性の強さはウイルスが作り出した複製の量によりが決定されます。
鼻粘膜の細胞を培養したものを、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)(*)、エストロゲン、またはビスフェノールA(BPA)に暴露させたのち季節性A型インフルエンザ・ウイルスに感染させました。
(*) エストロゲンと同じように作用する化合物。 ホルモン補充療法や不妊治療に用いられる。 今回の実験に用いられたのは、ラロキシフェン、クロミフェンクエン酸塩、オスペミフェンなど。
結果

女性から採取した鼻粘膜サンプルにおいてのみ、エストロゲン、SERMのうちラロキシフェン、BPAによりインフルエンザ・ウイルスの増殖が千倍近くも緩和されました。 エストロゲンは、細胞内に存在する2種類のエストロゲン受容体のうちエストロゲン受容体βの方を介して抗ウイルス作用を開始していました。

男性の細胞ではエストロゲンが抗ウイルス作用を発揮しない理由

エストロゲンは男性でも生産されますが、男性は女性に比べて細胞に備わるエストロゲン受容体の数が少数です。 このために男性の細胞ではエストロゲンの抗ウイルス作用が発揮されなかったのだと考えられます。

コメント
研究者は次のように述べています:
「閉経前の女性であってもエストロゲンの体内量は周期的に変動しているので、エストロゲンの抗インフルエンザ効果は実感しにくいかもしれません。 しかし、一部の避妊薬を私用している閉経前の女性やホルモン補充療法を使用している閉経後の女性は、季節性インフルエンザによる被害を受けにくい可能性があります」