過剰な銅が男児のワーキング・メモリーに悪影響?(2/2ページ)

結果

男子に限って、血中銅濃度が高い(110.4μg/dL超)とワーキング・メモリーのテストの成績が悪いという関係が認められました。 血中銅濃度が高い子供は女子よりも男子に多く見られました。 血中銅濃度が低い(不足している)場合にはテストの成績は悪くなっていませんでした。

今回の結果から、子供でも大人と同様に銅の血中濃度が高いと認知機能に悪影響がある可能性が示唆されます。

解説
性別による違い

男子と女子とで銅の血中濃度に差があった理由は不明です。 食事や環境的要因の違いが原因かもしれません。

血中銅濃度のワーキング・メモリーへの影響が男子でのみ見られたのは、男性の方が銅の神経毒性に敏感だからかもしれません。 マウス実験に、銅のナノ粒子の毒性が雌よりも雄で強く発揮されるという結果になったものがあります。 ただし、ヒトの高齢者を被験者として行われた 2008年の研究では、血中銅濃度が高いと男女を問わず認知機能が低いという結果になっています。
2008年の研究と今回の研究とで男女差に関して相違している理由として研究チームは「2008年の研究では認知機能全体を調べたのに対して今回の研究ではワーキング・メモリーのみを調べたためかもしれない。 高齢者と子供という違いもあるかもしれない」と述べています。
銅不足ではワーキング・メモリーが悪化していなかった件

理屈のうえでは、銅は過剰でも不足でも脳機能に支障をもたらすはずです。 今回、銅が不足しているグループでワーキング・メモリーの低下が見られなかったのは、銅不足のワーキング・メモリーへの影響が長期的であるからかもしれません。 銅不足によって子供のワーキングメモリーが直ちに悪化するのではなく、銅不足が長期的に作用して成人や高齢者になったときにワーキング・メモリーに悪影響をもたらす可能性が考えられます。

今回の研究の弱点
研究チームは今回の研究の弱点として次の3点を挙げています:
  • 測定したのが血中の遊離銅のみの量ではなく血中の銅の総量だった。 認知機能の発達に影響しているのは、セルロプラスミン結合銅ではなく血液脳関門(血液中の有害物質が脳細胞まで来ないようにするための防御機構。血管の網で出来ている)を通過できる遊離銅かもしれません。
  • 飽和脂肪やトランス脂肪などの食事的な要因を考慮していない。
  • 観察研究であるために血中銅濃度とワーキング・メモリーとの因果関係を示すものではない。