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運動で骨が丈夫になるのはイリシンのお陰?

(2015年9月) "Proceedings of the National Academy of Sciences" に発表されたアンコーナ大学(イタリア)などによる研究で、運動により筋肉から放出されるイリシンというホルモンが骨量の増加に関与していることが示されました。出典: Molecule Made by Muscle Shown for First Time to Build Bone: Implications for Age-Related Bone & Muscle Loss

運動と骨
運動や運動により骨に加わる物理的な力が骨の形成を促進することは以前から知られていました:
  • スポーツ選手が引退して運動量が減ると、骨量が徐々に減少して骨折のリスクが増加することがある。
  • 無重力空間で暮らす宇宙飛行士では閉経後の女性の10倍のペースで骨量が急激に減少する。
  • 体を全く動かさない植物状態の人や脊髄を損傷した人で脆弱性骨折(外傷すら生じない程度の力が加わっただけで生じる骨折)のリスクが増加する。

しかし、そのメカニズムはこれまで不明でした。

研究の方法
この研究では、若い雄マウスにイリシンを注射するという実験を行いました。 イリシンはマイオカインと呼ばれる特殊なタンパク質分子で、骨格筋(*)に由来し、体脂肪の調節に関与しています。参考記事: 寒さに10分間震えるだけでカロリーを燃焼しやすい体質に

(*) 内臓の筋肉ではない、いわゆる普通の筋肉。
結果
イリシンを注射されたマウスでは骨の量と強度が増しました。 イリシンの注射により増強されていたのは主に皮質骨で、海綿骨への影響はほとんど見られませんでした。 イリシンによる骨増強作用は主として骨の成長によるものでした。
皮質骨と海綿骨
骨は、皮質骨という骨の表面を形成する密度が高くて硬い部分と、海綿骨という骨の内側に存在しカルシウムを貯蔵する部分とで構成されています。 骨重量全体の80%を皮質骨が占めています。
解説

今回の結果から、運動により骨が丈夫になるのはイリシンが造骨細胞による新しい骨の合成を直接的に促進するためだと思われます。

研究者は次のように述べています:
「この研究により、運動中に筋肉から放出される分子(イリシン)が長骨(*)に直接作用して骨を強くすることが初めて確認されました。 長骨は運動に使用される骨であるのと同時に、最も骨折しやすい骨でもあります」
(*) 手足の骨や肋骨(ろっこつ)などのように長い形状をした骨のこと。
実用性
今回の結果は、サルコペニア(徐々に筋肉量が減っていくという高齢者に見られる病気)と骨粗鬆症(骨がもろくなって骨折しやすくなるという病気)の治療法の発展に寄与することが期待されます:
「サルコペニアと骨粗鬆症は併発するケースが少なくありません。 筋肉量の減少も骨量の減少も高齢者では一般的な問題であり、身体障害の原因になります。 筋肉と骨の関係を分子の面から理解することは、加齢による骨量と筋肉量の減少をまとめて治療できる薬物の開発につながる可能性があります」