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持久力と脂肪燃焼率がアップする薬が開発中

(2017年5月) "Cell Metabolism" に掲載されたソーク研究所(米国)の研究によると、運動の健康効果の一部を得られる薬が開発される可能性があります。 マウスに薬物を投与したところ、運動習慣を続けた場合と同じように持久力(有酸素運動を継続する能力)が付いたり脂肪燃焼率がアップ(*)したのです。
(*) 筋肉がブドウ糖ではなく脂肪を利用するようになる。

これまでの研究

研究チームの以前の研究でマウスの遺伝子を改造してPPARデルタ(PPARD)と呼ばれる遺伝子が永続的に活性化させたところ、運動習慣を続けさせたときと同じように、持久力が身に付き、太りにくくなり、インスリン感受性が増加しました。

研究チームはさらに、GW1516(以下「GW」)と呼ばれる化合物を用いてPPARD遺伝子を改造したときに得られる上記の効果のうちを達成することに成功しました。 しかし、の効果はGWでは得られませんでした。

今回の研究

GWを増量するだけで...

困り果てた研究チームが、マウスに投与するGWの量を増やし投与期間も延長(4週間→8週間)するという力任せなことをやってみたところの効果も得られました。 GWを投与されなかったマウスが160分間を走り続けたところで疲労困憊となったのに対して、GWを大盛で投与されたマウスは270分間も走り続けることができたのです。(どちらのマウスも運動習慣はなかった)

ただ、GWの大量投与でも運動習慣を続けさせたマウスの筋肉に見られるミトコンドリアの増加・血管の増加・筋繊維のタイプの変化(*)などは見られませんでした。
(*) ブドウ糖を利用するタイプから脂肪を利用するタイプへの変化。

GWを投与した場合にもしなかった場合にも、血糖値が70mg/dlほどにまで落ちたところでマウスが疲弊したため、研究チームは「低血糖が疲弊の原因なのだろう」と考えました。

遺伝子の活性の調査

力任せが功を奏して溜飲を下げた研究チームは冷静さを取り戻し、分子レベルでどういうことが起こっているかを調べるために、GWを投与したマウスの筋肉における遺伝子発現状況を調べました。 その結果、GWの投与により975の遺伝子において発現量が増えたり減ったりしていることが明らかになりました。

発現量が増えた(活性化した)遺伝子のうちには脂肪の分解や燃焼を調節する遺伝子群が含まれていました。 また驚いたことに、発現量が減った遺伝子のうちには炭水化物を分解してエネルギーを生み出すのに関与する遺伝子群が含まれていました。

このことから、PPARD経路は運動中に筋肉のエネルギー源としてブドウ糖が消費されないように抑制しているのだと考えられます。

PPARD経路がそのようにブドウ糖の消費を抑制するのは、おそらく脳のエネルギー源としてブドウ糖を確保しておくためでしょう。 筋肉はエネルギー源としてブドウ糖でも脂肪でも利用できますが、脂肪はブドウ糖よりもエネルギー源として利用しにくいため、筋肉も必要に迫られない限りはブドウ糖をエネルギー源として使います。

実用性

GWがヒト用に実用化されれば、肥満や2型糖尿病の治療のほか、高齢・身体障害・入院などで思うように運動をできない人の役にも立つことが期待されます。 複数の製薬会社がすでに、GWを利用した薬の臨床試験を行うことを検討しています。