長時間座ることによる健康への悪影響を運動で相殺できる?

過去の複数の研究により、運動習慣のある人でも座っている時間が長いだけで体に悪いことが示されていますが、"Obesity(肥満)" 誌(2013年11月)に掲載された研究によると、長時間座り続けることによる健康への悪影響は、運動によって相殺することができます。

この研究では、米国人の成人 5,083人を、①座って過ごす時間の長さ、および②運動量のそれぞれについて多・中・少という3つのグループに分類し、肥満のリスクとの関係を調べました。

その結果について研究者は次のように述べています:

「運動量が少ないグループでは肥満になるリスクが他の2つのグループの4倍になっていましたが、座っている時間が長くても肥満のリスクは増えていませんでした。 肥満のリスクと関わりがあるのは、テレビを観るなどして座って過ごす時間が長いかどうかよりも、運動の習慣があるかどうかだったのです。

1日あたり5~10分の中~高強度の運動をするだけであっても、肥満のリスクはかなり減っていました」


今回の研究によると、運動によって肥満(および肥満に由来する疾患)のリスクを減らせるということですが、これまでに発表された複数の研究では、座って過ごす時間が長いと、心臓疾患、腎臓疾患、糖尿病、ガン、欝のリスクが増加するとされています。 これらの疾患のリスク増加すべてが肥満によるものであるなら、「長時間座り続けることによる健康への悪影響を運動によって相殺できる」と言えるでしょうが、そうではないでしょうね。

座っている時間が長いのは腎臓にも良くない」によると、座っている時間が長い人では、肥満であるか否かに関わらず慢性の腎臓病になるリスクが高いとなっています。

また、「座っている時間が長いのは心臓にも良くない」によると、皮下脂肪や内臓脂肪は運動によって減りますが、心膜脂肪(心臓の周りに付く脂肪)だけは、運動をしていても、座って過ごす時間が短くない限り減りません。

他のこの手の研究でも、大抵は「体重を考慮したうえでなお健康への悪影響がある」となっています。 今回の研究は、運動によって肥満を抑えられることを示しただけで、運動によって「長時間座り続けることによる健康への悪影響を運動によって相殺できる」とまでは示していないと思います。

ソース記事の元になった論文でどんな書き方をされているのか不明ですが、単に肥満のリスクしか見ていないのであれば、「座っている時間が長くても運動をしていれば太らない」という世間の一般常識と同じ結果になるのは当たり前という感じですね。

「運動習慣のある人でも座っている時間が長いだけで体に悪い」というのは、「運動をしてさえいれば良い」という世間的な常識から一歩進んだ新しい考え方なわけですが、今回の研究は、その新しい考え方に反駁したのではなくて、一歩後退して世間的な常識を再び主張しているだけだと思います。