激しい運動によって脳内の神経伝達物質の量が増える。 抑鬱への効果も

(2016年2月)"Journal of Neuroscience" に掲載されたカリフォルニア大学デイビス校の研究により、激しい運動によって脳内でグルタミン酸塩とGABA(γアミノ酪酸)という2種類の神経伝達物質の量が増加することが明らかになりました。

神経伝達物質(*)の不足が見られる抑鬱などの精神神経障害(†)の治療において運動が有益であると考えられていますが、今回の発見はその理由の解明につながると見られています。

(*) 脳細胞間のコミュニケーションに関与する物質。 心身の健康に影響する。

(†) 例えば、鬱病患者でグルタミン酸塩とGABAが欠乏していたのが、鬱病が治るとこれらの量も回復するといったケースが知られています。
研究の方法

健常者38人を2つのグループに分けて、一方のグループにのみエアロバイクを用いて最大心拍数の80%となる激しさで8~20分間の運動をしてもらい、運動の前後にMRIを用いて脳の2ヶ所の領域におけるグルタミン酸塩とGABAの量を測定しました。 もう一方のグループは、MRIによるグルタミン酸塩とGABAの量の測定だけを行いました。

結果
運動をしたグループにおいてのみ、視覚皮質(*)と前帯状皮質(†)の両方でグルタミン酸塩とGABAの量が増加していました。 これらの神経伝達物質の量は時間が経つと元に戻りましたが、神経伝達物質の増加による影響は比較的長期間にわたり残っていました。

(*) 視覚的な情報を処理する領域。

(†) 心拍と一部の認知機能や感情に関与する領域。
解説

今回の結果から、患者にもよりますが抑鬱の治療に運動が有効である可能性が考えられます。 25才未満の患者では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の副作用が強いことがあるため、代替療法としての運動は若い患者にとって特に有益かもしれません。

脳の消費エネルギー

今回の結果は、運動中に脳が大量のエネルギーを消費する理由の説明にもつながるかもしれません。 激しい運動の最中に脳は、数学の勉強をしたり囲碁や将棋をしたりするとき以上に大量のエネルギーを消費しますが、その大量のエネルギーを脳がいったい何に使っているのかは未だ不明です。

今回の結果からすると、脳は運動中に消費するエネルギーの一部でもって神経伝達物質の生産量を増やしています。 研究者によると、運動中に疲労の限界に達するのは筋肉で酸素やエネルギーが枯渇するからだけでなく、脳が限界に達するせいもあるかもしれません。