運動によるニューロン形成の恩恵を得るにはセロトニンが必要

(2013年5月) 、マウスに回転車で運動をさせると脳のニューロン形成が増加しますが、"Journal of Neuroscience" に掲載された Max Delbrück Center for Molecular Medicine(ドイツ)の研究により、この増加プロセスにとってセロトニンによる信号が重要であることが明らかになりました。

脳でセロトニンが不足するようにした遺伝子改造マウスでは、通常の状態でのニューロン形成はなされるけれども、運動により誘引される増殖(ニューロン形成)が阻害されて、回転車で運動をさせても新しいニューロンの形成量が増加しないというのです。

運動によって、海馬における神経形成が誘発されることは以前から知られていましたが、その仕組みが今回の研究で完全には解明されました。 海馬というのは、学習と記憶を司る脳の領域であって、ヒトの一生を通じて新たにニューロンが形成され続ける部位の1つです。

実験の結果
今回のマウス実験で明らかになった内容は次の通りです:
  • セロトニンを生産できる(普通の)マウスでは、運動中にセロトニンが普段以上に放出される傾向にある。
  • セロトニンの放出量が増えることで、海馬におけるニューロン前駆細胞の増殖が増加する。
  • セロトニンはさらに、幹細胞からニューロン前駆細胞への移行を容易にしていると思われる。

研究グループが驚いたのは、脳でセロトニンを生産できないように改造されたマウスでも通常の(運動に誘発されるのでない)神経生成は行われるという点でした。

このような(セロトニンが欠乏している)改造マウスにおいては、幹細胞が死滅するか、あるいはニューロンにならないケースが見られたものの、セロトニン不足を補うメカニズムが前駆細胞に備わっているようで、幹細胞からニューロンになる途中段階である前駆細胞のとき(幹細胞 → 前駆細胞 → ニューロンというステップの真ん中にあたる)に、盛んに分裂することで前駆細胞の貯蓄量を維持していました。

結論
以上から、研究グループは次のように結論付けています:
「成人の脳にとって通常のニューロン形成にセロトニンは必ずしも必要ではないが、運動によるニューロン形成の恩恵を受けようとする場合には必須である」